Tandem lesionに対する血栓回収の成績

Management and outcome of patients with acute ischemic stroke and tandem carotid occlusion in the ESCAPE-NA1 trial. 
Marko M, et al.; ESCAPE-NA1 investigators.
J Neurointerv Surg. 2021 May 4:neurintsurg-2021-017474.

Abstract
頸動脈閉塞と頭蓋内血管閉塞のダブル閉塞症例に対する血栓回収療法の成績をESCAPE-NA1研究から抽出した。全血栓回収症例の10%にダブル閉塞を認め、54%でステント(75%が頭蓋治療後・25%が頭蓋治療前)が留置された。予後良好群(mRS0-2)は全症例(60%)より良い傾向(71%)にあったが有意差は無かった。ステント使用の有無も予後に関係なかった

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Tandem lesion
全体(上から2段目)はそうでない通常の頭蓋内閉塞(上から1段目)に比べてmRS0-2の患者が多いが、その中でもステントを留置した群(上から3段目)はステント非留置群(上から4段目)より良かった。

Introduction
頸動脈と頭蓋内動脈のダブル閉塞はTandem lesionと呼ばれ、血栓回収症例の15-20%に存在すると言われていて、tPAの成績が悪い事が知られている。これに対する血栓回収療法は予後良好例を増やす事が知られているが詳細は不明である。今回ESCAPE-NA1研究のサブ解析としてTandem lesionに対する血栓回収の成績を報告する

Methods
ESCAPE-NA1研究は血栓回収後に神経保護薬(nerinetide)に上乗せ効果があるかどうかを検証したものである(有効性を証明できなかった)。ここで使用したデータからTandem lesion症例(タンデム115vs非タンデム981)を抽出し、治療成績を評価した。非タンデムとタンデム患者は非タンデム患者に比較し、若年(64歳対71歳)・男性(72%48%)3か月以内のTIA・脳梗塞(10%4%)・少ない心房細動率(9%38%)・IC閉塞多く(42%22%MCA閉塞少ない(54%75%)だった。

Results
タンデム患者は非タンデム患者に比べ、同程度の再開通率だったが3か月後の予後良好は多かった(71%60%)。タンデム患者に対しては、約半分がステント留置され、(頭蓋内再開通前留置25%、後留置75%)、ステント留置の方が予後が良い傾向にあった。ただし症状を出した頭蓋内出血率(3%)は同じだったが、全出血合併症は多い傾向(45%24%)にあった。

<川堀の感想>
サブ解析のため厳密な比較は不可能であるが、頸動脈閉塞を合併した症例が10%程度いたこと、IC閉塞が多い事、ステントを留置した方が予後が良い傾向があった事、ステント留置は頭蓋内再開通後が多い事、ステント留置で小さな出血は増えるが全体の出血は増えない事など、概ね臨床での経験に近いデータであった。Tandem lesionはそのままだと重大な脳梗塞を来すことから積極的な治療が良いと自分でも感じている。