重症脳損傷に対する外減圧のRCT(効果が否定された)

Patient Outcomes at Twelve Months after Early Decompressive Craniectomy for Diffuse Traumatic Brain Injury in the Randomized DECRA Clinical Trial.
Cooper DJ, et al.; DECRA Trial Investigators and the Australian and New Zealand Intensive Care Society Clinical Trials Group.
J Neurotrauma. 2020

Abstract
頭部外傷の外減圧vs内科治療の比較試験(DECRA study)のサブ解析で12か月後の機能回復をGOS-Eで評価した。外減圧群は内科治療より回復が悪い傾向(OR1.7, p=0.07)にあり、予後良好な患者の割合は低く(OR0.3, p=0.03)、植物状態になる割合が高かった(OR5.1 p=0.04)

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手術の写真。Bi-coronal incisionで両側の骨をSSSをまたいで開頭。術後のCTとXp
6か月後と12か月後の予後評価(GOS-E)。死亡(黒)は変わらないがオレンジ系の重度障害は開頭(DC)群で増えていて、予後良好(紫と青)は少なくなっている。

Introduction
重症頭部外傷は60%近くが死亡/重度障害を残す。頭蓋内圧低下が2次損傷予防に有効で通常高張液投与・髄液ドレナージなどが施行されるが、効果が低い患者にはバルビツレート・減圧手術・低体温療法なども行われている。外減圧の効果を見たDECRA研究では6か月後の予後はむしろ外減圧で悪化していた。今回DECRAサブ解析で12か月後の患者回復を調べた。

Methods
15-59歳、非貫通性外傷、GCS3-8、頭蓋内圧20mmgHg以上(除外:瞳孔散大、大きな頭蓋内出血)の患者を72時間以内に外減圧群か内科治療群に振り分ける(その前の脳室ドレナージは可)。手術はbi-coronal incisionで両側開頭&硬膜☓字切開(SSSは温存)。12か月後の予後をGOS-Eで評価

Results
開頭群73人、内科治療群82人。IMPACT予後予測で患者背景は同じ。短期間(ICU中)のICP低下率・人工呼吸離脱率などは開頭群が良かったが、12か月の予後は開頭群で悪い傾向(p=0.07)が認められた(死亡:20%で同じ、植物状態14%vs3%、予後良好状態10%vs26%で内科治療(後ろ)の方が良い)

<川堀の感想>
非常に残念な結果の論文。今まで一生懸命やってきたことが否定されたのかと思った。ただ日本でも頭蓋内圧が高いと想定される場合には減圧手術を行うことが多いが、片側の腫れに対して片側を開けることが多いように思う。今回は大きな局所病変の無い全脳が腫れている状態に対して両側開頭を行っており、そもそも通常の減圧とは目的が違うので今回の結果から単純に減圧は悪いとは決められないと思う。ただ外科治療が内科より悪かったという事実は手術の合併症(骨感染)や手術自体の侵襲(例えば貧血進行や凝固亢進など)の可能性もあり、手術が必要と判断するのであれば急ぐ状況ではあるが他の合併症を引き起こさない様な丁寧な治療が一番重要だと思う。自分は全脳腫れた人にこのような減圧術を行った経験は無いが、今後も多分しないだろう。