SB623(サンバイオ細胞)の栄養因子分泌力

Human mesenchymal stromal cells and their derivative, SB623 cells, rescue neural cells via trophic support following in vitro ischemia.
Tate CC, Fonck C, McGrogan M, Case CC.
Cell Transplant. 2010;19(8):973-84

 Abstract
SB623(骨髄幹細胞MSCNotch1遺伝子導入)とMSCの栄養因子による神経保護効果を比較した。虚血負荷を与えた細胞に①幹細胞を膜ごしに共培養、②幹細胞の培養液を与える方法を行った。両群とも回復促進したが、差は無かった。栄養因子はSB623DKK1MCP1IL6,8MMP1VEGFSB623で多く出ていた。

Figureの説明>BMP(細胞生存↑)、FGF(神経発達↑)、HB-EGF(梗塞サイズ↓)、HGF(グリア瘢痕↓・軸索伸張↑、血管新生↑)、IL-6(梗塞サイズ↓)、IL-8(細胞生存↑)、MCP(細胞遊走↑)、MMP(血管新生↑)、PDGF(細胞生存↑)、VEGF(神経発達↑)などの良い効果が見込まれる因子が上がっている。

Introduction
ヒトNotch1細胞内ドメインを遺伝子挿入したSB623は通常のMSCより脳梗塞への効果が高いことが動物実験で報告されている。その効果は細胞分化や栄養因子によると言われているが、効果が比較的早期から出ることから栄養因子の関与が大きいと考えられるが、どの程度通常のMSCと違うのかを今回検証した。

Methods
ヒトBMSCLonza)をαMEM10%FBSで2度継代した後に半分をNotch1遺伝子導入し、さらに2度継代。細胞はCD29/90/105陽性, CD31/34/45陰性。ラット神経細胞・海馬切片を虚血にして①幹細胞と溶液のみ交換できる膜で共培養、②幹細胞培養液を入れて生存率(LDH)をチェックし、ELISAで栄養因子をチェックした。

Results
神経細胞も海馬切片もMSC/SB623で共に死亡(LDH量)が有意に少なかった(75%減)。また虚血24時間後共培養でも効果あり。培養液のみを混ぜても効果が得られた(細胞が毒物を消去したことを否定)。20万個/ml72時間培養した細胞のサイトカインはSB623MSCより高かったのはDKK-1IL-6/8MCP1であった。

<川堀の感想>
MSCおよびその遺伝子改変のSB623を比較し、栄養因子分泌はSB6231.5-5倍多かったが、細胞保護(急性期)はほぼ同様との結果(効果有り)であった。SB623が圧勝するかと思っていたので少し驚いたが、今後もより良い細胞を開発する必要があることが示された結果と思った。