脊髄損傷にMSCをIVすると肺に留まるがエクソソームが働く

Small extracellular vesicles released by infused mesenchymal stromal cells target M2 macrophages and promote TGF-β upregulation, microvascular stabilization and functional recovery in a rodent model of severe spinal cord injury
Masahito Nakazaki, Tomonori Morita, Karen L Lankford, Philip W Askenase, Jeffery D Kocsis
J Extracell Vesicles. 2021 Sep;10(11):e12137. doi: 10.1002/jev2.12137.

Abstract
脊髄損傷モデルに対して間葉系幹細胞MSCを静注すると機能改善をもたらすが、その機序として肺にトラップされたMSCから分泌されたエクソソームが、マクロファージをM1M2TGFb2分泌アップと、内皮とペリサイトにTGF-Rを発現させる効果によって、Gapジャンクションを保護し、BBBを守っていた。またエクソソーム1回投与はダメだが3回投与するとMSCと同じ効果が得られた

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研究のシェーマ:肺にトラップされたMSCから分泌されたエクソソームがM2に作用しTGFb分泌とTGFR亢進でBBBを保護している
MSCに付けたDilがエクソソーム(CD63)の膜にも存在し、脊髄内でM2に取り込まれていた。

Introduction
脊髄損傷に対する間葉系幹細胞の静脈内投与は患部に幹細胞が到達していないにも関わらず機能改善が得られる事が動物モデルで報告されており、幹細胞の分泌するエクソソームが作用を果たしているのではないかと考えられている。今回MSCを投与して分泌されるエクソソームのマクロファージへの影響を評価した

Methods
SDラットにImpactによる脊髄損傷を行った。MSCDiRラベル)もラットから採取しエクソソームは培養上清を超遠心して確保した。せき損1週後に❶MSC200万、❷Exo2.5x10e9(4.6ug)、❸❷の1/33日間連続投与の3群に分け静脈投与した。運動機能評価や免疫染色等で評価した

 Results
❶=❸>❷>Vehicleの順に機能回復が得られた。MSC由来ExoDiRCD63が共陽性)が脊髄内のMに存在し、❶❸群では免染・WesternM1M2に変化し、2週後に組織内TGFbmRNA量、TGFb-レセプターが増加していた(3カ月後は変わらず)。結果、Evansblue の漏れが❶❸で少なく、ZO-1などの発現(mRNA/タンパク)も保持されていた。

<川堀の感想>
MSCが肺にトラップされるが分泌されたExosomeが脊髄にたどり着いてM1M2に作用しBBBを守る事は概ね了解可能である。3日間連続投与(1/3ずつ)と1日投与だと3日連続の方が良いのもMSC3日間は肺で生着してExoを出し続ける事、1回だとすぐにExosomeが分解されることを考えると納得できる。ただExosomeの中身が何かは言及されていないところは残念。DiRMSCExoに移る事もデータが欲しいところ。