脊髄損傷では髄内の白血球浸潤は12-48時間

Dynamics of the Inflammatory Response After Murine Spinal Cord Injury Revealed by Flow Cytometry
David P. Stirling and V. Wee Yong
Hotchkiss Brain Institute and Department of Clinical Neurosciences, University of Calgary, Calgary, Alberta, Canada
Journal of Neuroscience Research 86:1944–1958 (2008)

Abstract
脊髄損傷後に生じる炎症反応(2次損傷)においてどの細胞がどの時間帯で血液・脊髄内で上昇しているかをFACSを用いて検証した。血中では、12時間で好中球、24-96時間でマクロファージが上昇したが、リンパ球は12時間でむしろ減少していた。脊髄では12-96時間で好中球の浸潤が上昇していた。

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12-96時間でのマイクログリア(左Iba-1緑)と好中球(右7/4赤)の経時的な変化。1列目は脊髄損傷の無い動物で好中球が浸潤していないが、脊髄損傷12-48時間で非常に多くの赤細胞が浸潤してきている。

Introduction
脊髄損傷は2次損傷(炎症細胞)の抑制が重要である。過去の報告では、まず髄内Microgliaが活性化・Gro-α(白血球遊走因子)を放出し、好中球(3時間)→マクロファージ→リンパ球と炎症が進む事が分かっているが、このdataは免疫染色が中心で定量評価されていない。今回FACSを用いて定量的に炎症細胞の活性化を評価した

Methods
マウスT9/10圧座モデルを12-96時間で血液・脊髄を採取し、FACSで解析。それぞれの細胞は表面マーカーで区別した。脊髄の免疫染色も同様に行った。

Results
脊髄損傷後の血中細胞の動向をFACSで確認したところ、12時間で好中球が上昇し、24時間-96時間でマクロファージが上昇しするが、リンパ球は12時間で減少しその後もとに戻るだけであった。これは免疫染色でも同様の結果であった。脊髄内では12-48時間で好中球が浸潤してきているのがFACSと免疫染色で分かった

<川堀の感想>
免疫染色とFACS2つの手法を用いて、脊髄損傷後の各炎症細胞の浸潤を調べた研究。概ね想定される結果であった。これらの浸潤は生理的な作用でもあり、どこまでそれを抑えれば良いのかについてはまた別の研究が必要だと考える。我々も好中球に着目した研究を進めていて、結果を待ちたい