脊髄損傷後の炎症細胞の浸潤の時間軸(好中球3日、マクロファージ1か月)

The cellular inflammatory response in human spinal cords after injury.
Fleming JC, Norenberg MD, Ramsay DA, Dekaban GA, Marcillo AE, Saenz AD, Pasquale-Styles M, Dietrich WD, Weaver LC.
Brain. 2006 Dec;129(Pt 12):3249-69.

Abstract
脊髄損傷後に炎症細胞が、いつ出現し何をするのか?を明確にするため、脊髄損傷患者の病理切片を検討した。好中球は数日で出現し10日くらいで消失、活性型マイクログリアは1週間-1か月、リンパ球は特に時期に関係なく出現&消失していたが少数だった。活性酸素は好中球で発現されたが貪食型マクロファージでは存在せず、MMP-9は好中球のみで発現していた。

Figureの説明>
脊髄損傷後の細胞の浸潤。緑が最も損傷されている部分。Defesinが好中球、CD68がマクロファージ。1日目は好中球がたくさん入ってくるが、3週目くらいをピークにマクロファージが入ってくる。
好中球の浸潤時間軸(1-3日目がピーク)
マクロファージの浸潤時間軸(数週から数か月が一番多い) 

Introduction
脊髄損傷動物モデルにおける炎症性細胞の(出現/ピーク/消失)は好中球(5時間/24時間/5日)、マクロファージ(2/7/数か月)、マイクログリア(1時間/7/数か月)、リンパ球(様々)で、これら細胞が組織の消毒(MPO/NADPH)や融解(MMP)を行っている。ただこれらに対する人間でのデータは少ないため今回検討した。

Methods
米国Miami projectを含む32例(死亡:事故直後~1年)の死亡後脊髄に対して免疫染色を施行。検討した項目は細胞種(好中球、貪食型マイクログリア・マクロファージ、TNKリンパ球、Bリンパ球)、組織の障害程度(βアミロイド、アクソン)、酵素(MPONADPHMMP)であった。

Results
損傷の中心(Zone1)は急性期はnecrosisだが2週後から空洞(cavity)になり周囲を好中球もしくはマクロファージでカバーされていた。中心の周り(Zone2)は急性期は軸索損傷や炎症反応が生じているが、のちにグリオーシスとマクロファージ浸潤を受けていた。好中球のピークは1-3日で主に早期に活性酸素とMMPを作っていた。マクロファージは数週から週ヶ月でピークが来ていたが活性酸素やMMPはあまり作っていなかった。T細胞は少しだけ、B細胞は全く存在しなった。

<川堀の感想>
脊髄損傷で無くなったの患者さんの切片を用いて、免疫細胞の浸潤とその働きを見た研究。今回の反応は感染症(ばい菌が侵入した状態)に対する反応を前提に組み立てられていると考えた。超急性期は好中球が活性酸素で相手を殺し(MPO/NADPH)、溶かす(MMP)働きをしていて、その後マクロファージが細胞破片を貪食する。ただ通常の脊髄損傷の場合にはその行為が裏目に出ているのだろう。ただ炎症は組織再生にもつながるのでその制御をどの程度行うのかは非常に難しい。