MAPS研究:ポリマーコートコイルによる脳動脈瘤治療の長期成績

Five-year results of randomized bioactive versus bare metal coils in the treatment of intracranial aneurysms: the Matrix and Platinum Science (MAPS) Trial.
McDougall CG, Johnston SC, Hetts SW, Gholkar A, Barnwell SL, Vazquez Suarez JC, Massó Romero J, Chaloupka JC, Bonafe A, Wakhloo AK, Tampieri D, Dowd CF, Fox AJ, Turk AS; MAPS Investigators.
J Neurointerv Surg. 2020 Dec 9:neurintsurg-2020-016906.

Abstract
MAPS研究。脳動脈瘤に対するコイル治療でポリマーコーティングと通常のコイルの5年間長期成績を580人で比較したが差は無かった。全破裂率0.3%、慢性期の年間破裂率は未破裂で0.1%・破裂で0%5人出血したが、3人はSAH治療1週間以内、2人は未破裂治療後慢性期だった。術後の塞栓状況(Raymond=dome filling)が再治療もしくは出血と関係していた。

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Raymond分類
5年間でのTAR(事実上の再治療)の頻度、RaymondⅠ(完全に埋まっている)とⅡ(neckに血流が入る)でも10%程度は再治療が必要で、Ⅲ(dome filling)は25%治療が必要になっていた。
TARとなる要因は10mm以上、破裂、RaymondⅢ、ネックサイズであり、RaymondⅠとⅡは差が無かった。


実際に破裂した症例の詳細。SAHでコイルしてRaymondⅢなら数日以内に1%くらいが再破裂する(逆に言うとⅠ-Ⅱなら再破裂しない)。また未破裂もⅢなら1%くらい破裂する(10mm以上とかコイルコンパクション有りとか悪い条件あり)。

Introduction
MAPS研究は、塞栓後にポリマーが膨張してより高い塞栓率となるMatrix2コイルと通常のコイルの治療成績を調べた研究で、ベアメタルコイルに対して非劣勢であった事(有意差無し)が報告されている。今回5年まで治療成績(治療直後の塞栓状況と経過(再破裂・全ての突然死・再治療))を報告した。

Methods
多施設(米国30、他17)ランダム化試験。破裂・未破裂にベアメタルもしくはMatrix2を用いてコイル塞栓を行った。5年後までTarget aneurysm recurrence(TAR:破裂・予期せぬ死亡・再治療)の有無をフォローした。開始時626名で5年後は580名フォロー出来た(dropout30%)

Results
どちらの群もTAR14%前後で変わらずMatrixの優位性は証明されなかった。TARと治療直後成績はRaymond分類と相関があった(Ⅰ:10%,:9%,:25%) 。またTARの大半は再治療(破裂1%・突然死0.3%・再治療13%)であった。破裂は5例で3SAH(治療1-4日後)、2例未破裂(1-2年後・10mm以上・コイルコンパクションあり)。再治療は1年以内がほとんどで4年以降は無かった。

<川堀の感想>
Matrixは親水性ポリマーが膨張してコイル腔を埋めてくれるのでよりタイトにコイルが巻けるようになるのが売りだったが、通常のコイルとそんなに変わらないという成績であった。ただ一番予防したいSAHなら再破裂、未破裂なら初回破裂に関しては少なくともNeck fillingに持ち込めば十分という事が分かった。事故は最後の最後に完璧を目指してもう一つコイル入れようかなと思った時に起きるので、私は「完璧の一歩手前」で終わらせる様にしているがそれを証明してくれた研究。