自動培養装置Quantumを用いると間葉系幹細胞の培養作業が500分の1に圧縮できる
Efficient manufacturing of therapeutic mesenchymal stromal cells with the use of the Quantum Cell Expansion System.
Hanley PJ, Mei Z, Durett AG, Cabreira-Hansen Mda G, Klis M, Li W, Zhao Y, Yang B, Parsha K, Mir O, Vahidy F, Bloom D, Rice RB, Hematti P, Savitz SI, Gee AP.
Cytotherapy. 2014 Aug;16(8):1048-58.
<Abstract>
骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の低コストで安全な製造のため自動装置(Quantum)を試した。装置とフラスコで同じ細胞を培養たところ、フラスコより9日短く、半分の継代数、500分の1の開放処理作業で細胞増殖が可能で、実際に細胞を脳梗塞モデル動物に投与したところ効果が確認できた。処理数が少ないため細菌感染がより少なくなるなど多くのメリットがあった。
<Figureの説明>
細胞増殖がフラスコよりQuantumの方が良かったとの報告
手間が1/500になったという報告
<Introduction>
間葉系幹細胞(MSC)は他家由来であってもHLA class2が発現していないため免疫反応が少なく、多くの疾患に対する細胞治療に用いられる可能性があるが、通常のフラスコ培養は非常に手間とコストがかかる。今回自動培養装置であるQuantum(TerumoBCT)の培養装置とフラスコでの製造の違いをチェックし、出来た細胞が本当に機能するか見た。
<Methods>
骨髄液(Lonza)から単核球を遠心分離しDMEM培養液(5%他家由来血小板融解物)を用いてQuantum(O2濃度5%)もしくはT175フラスコ(O2濃度20%)で育てた。獲得したMSCは増殖率・表面抗原・T細胞制御能・脳梗塞動物投与で機能を評価した。
<Results>
フラスコは30日で3-5回の継代で平均2.9億個に増殖したが、Quantumは20日で2回の継代で6.6億個まで増殖し、CyQuant増殖率測定も良かった。出来たMSCのT細増殖抑制・分化能・表面マーカー・生存率は同じだったが、動物投与した場合QのMSCはフラスコ・生食より効果があった。製造コストはともに180万円前後であったが、作業に係るコストは80%減で開放手技は1/500だった。
<川堀の感想>
個人的な知り合いでもある米国Savitz先生の論文。今回の実験は、フラスコと自動培養装置では培養の条件を完全に一致する事が難しいので結果を鵜呑みには出来ない(それでも酸素濃度は合わせられたはず)。またQuantum由来の細胞は効果が高かったのかについて調べても良かったと思う。ただ論文自体がコスト削減を調べる事が主眼であり、大幅に可能なる事が証明された点は素晴らしいと思う。我々も実用化に向けた研究を同じQuantumで行っていて、もっと良い方法を確立(更なるコストダウン)しており、早期に患者に届く再生医療を成し遂げたい。