脊髄損傷動物モデルにMSC由来エクソソームを投与するとM2マクロファージに取り込まれ損傷脊髄に存在する

Intravenously delivered mesenchymal stem cell-derived exosomes target M2-type macrophages in the injured spinal cord.
Lankford KL, Arroyo EJ, Nazimek K, Bryniarski K, Askenase PW, Kocsis JD.
PLoS One. 2018 Jan 2
PMID: 29293592

Abstract
脊髄損傷モデルに間葉系幹細胞(MSC)由来エクソソームを静脈投与して324時間後の分布を検証した。MSCDiR染色することで、エクソソームはDiRCD63の両方で評価可能であった。エクソソームは損傷された脊髄に存在したがノーマル脊髄にはいなく、特にM2のマクロファージ(CD206)内に取り込まれていた

Figureの説明>
損傷部位(点線で右がダメージ側)の辺縁にエクソソーム(DiR青)が集まっている。
損傷した脊髄内に存在するマクロファージ(OX42緑)の中にエクソソーム膜(DiR青)とエクソソームマーカー(CD63赤)が確認される。

Introduction
免疫抑制剤なしでMSCを脊髄損傷モデル動物に静脈投与すると機能回復は得られるが、MSC自体は脊髄には存在しない(24-48時間肺に集積し、その後消失)。機序としてMSCから分泌されるエクソソームが効果をもたらすと考えられるが、その分布(損傷部位に集まるのか・どの細胞に取り込まれるのか)を見た研究は無いため今回エクソソームをDiR染色し、CD63(エクソソームマーカー)と合わせて検討した。

Methods
MSCDiR(細胞膜の蛍光染色)で染め、エクソソームは超遠心法(10G)で回収した。SDラット脊髄損傷1週後に100ug(25億個=5000万個のMSCより抽出)/0.2mlPBSを静脈投与。3時間と24時間後に脊髄を採取し各種の免疫染色(神経細胞:Neurofilament、グリア細胞:GFAP、エクソソーム:CD63、マクロファージ:OX42M2マクロファージ:CD206M1マクロファージ:iNOS、リンパ球:CD4CD8)を行った。

Results
損傷脊髄内にDiRシグナル(CD63はほぼ一致したのでエクソソームと考えられる)が確認されたが、正常脊髄には無かった。ただマクロファージの自家傾向が非常に強く判別が難しかった。シグナルは特に損傷辺縁部でOX42陽性のマクロファージ内にあり3時間より24時間後で多く存在した。またこのマクロファージはM2が主でM1や他の細胞にはほとんど無かった。

<川堀の感想>
脊髄損傷1週間後にエクソソームを投与した場合、DiR染色とCD206で染まるエクソソームがマクロファージ内にあったという論文。幹細胞が損傷部位にほとんどいないのになぜ効くのかについての一つの答えだと思う。染色方法の工夫がメインの論文で、エクソソームが能動的に取り込まれるのかどうかについての検討は無いことは残念