20180509 くも膜下出血の水頭症発生率はコイルの方が少ない

Effect of choice of treatment modality on the incidence of shunt-dependent hydrocephalus after aneurysmal subarachnoid hemorrhage. 
J Neurosurg. 2018 Mar 9:1-7. [Epub ahead of print]

Abstract>京都大学グループ。くも膜下出血後のコイルとクリップ治療後にシャント治療が必要な水頭症合併の頻度をpropensity score分析で比較した。トータル566人の患者に治療を行い水頭症頻度22%であった。多変量解析では高齢・脳室内出血・クリップ(30%vs16%)が有意な因子であった。

 Figureの説明>クリップ群とコイル群では患者背景が一部違うので、これを統一するため年齢や性別、WFNS分類、血腫量、動脈瘤部位などを合わせたPropensity score分析を行ったところ、クリップはコイル治療より2.2倍シャントになる確率が高いことが分かった。

 Introduction>くも膜下出血治療(クリップorコイル)後に水頭症&シャント治療が必要になる患者は11-31%いるが、シャント治療は高再治療率(13-32%)で予後を悪化させる。コイルとクリップどちらが水頭症発現率が低いかについての検討(日本脳卒中データ:コイルで低、BRAT:同じ)を対照群を統一する方法で調べた。

 Methods2009-2016に京大関連の3病院で、発症72時間以内に治療したSAHが対象。クリップ/コイルは術者の判断で、その他の治療は概ね同様であった。シャント治療は症状の出現&画像上水頭症に対して行った。クリップとコイルの対象患者群を合わせるためpropensity score matching 分析を行った。

 Results566人がエントリー(平均65歳、女性75%、前方循環92%、クリップ67%、コイル33%)。そのままの比較ではクリップ群でシャントが多かったが、背景を一致させたPropensity score分析でもシャント手術率は30% vs16%で有意にクリップで多かった(OR2.2)。

 <川堀の感想>昔、くも膜下出血患者においては、手術によって血腫をたくさん取ることが水頭症を発生させない方法だと教わったが、コイル治療の出現によって状況が全く変わったことを感じ、実際の私の実体験でもそう思う。日本では依然クリップが多いが、今後はコイルが必ず主流になるであろう。本研究では手術の合併症率や回復具合などは論じられていないので、それも紹介されていればよかったかもしれない(コイルが勝つだろう)