脳梗塞急性期に対する骨髄幹細胞の静脈投与治験(Athersys社/MASTERS研究)

Safety and efficacy of multipotent adult progenitor cells in acute ischaemic stroke (MASTERS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial.
Hess DC, Wechsler LR, Clark WM, Savitz SI, Ford GA, Chiu D, Yavagal DR, Uchino K, Liebeskind DS, Auchus AP, Sen S, Sila CA, Vest JD, Mays RW4.
Lancet Neurol. 2017;16(5):360-368.

Abstract
中~重症(NIHSS8-20)の脳梗塞患者に対してMAPC(他家骨髄由来の多能性幹細胞)の第2相RCTを行った。発症から24~48時間後にMACPCを4億or12億orプラセボ投与。126人が参加し、安全性上の問題点は無かったが、90日後の全般改善は変わりなかった。

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Day 90では全ての検査項目でp valueが0.05以上で優位差を示せなかったが、1年後はmRS1以下の患者が細胞治療群で優位に多かった。

Introduction
tPAと血栓回収療法は超急性期(6時間以内)で有効だが、受けることが出来る患者数や回復具合には改善の余地が有る。脳梗塞後1週間頃は過剰な免疫が働いており、細胞治療が有効な可能性がある。多分化成人幹細胞は骨髄由来だが他の幹細胞より栄養因子分泌力などで優れている。今回脳梗塞患者に対する第2相試験を行った(MASTERS研究)。

Methods
多施設RCT18-83歳・中等~重症(NIHSS8-20点)の脳梗塞・24-48時間以内にMAPC投与。細胞数は12orプラセボ。1,1,3,12ヶ月後にmRS/NIHSS/BIなどを用いたGOS評価(primary endpoint:90日後の改善率)、MRI、採血(炎症系、リンパ球(CD3, Treg))などを評価。

Results
129人で患者背景に大きな違いは無かった。90日後の全般改善は細胞治療とプラセボで違いは無かった(OR0.8)が、1年後では差を認めた(細胞群23%vsプラセボ8%OR3.5)。採血では2日目で血中全Tリンパ球や炎症因子が減少していた。重篤な合併症は同程度だったが、細胞に関連する合併症は細胞治療群で多かった

<川堀の感想>
90日の解析では変わりなかったが、1年後ではほとんど完全治癒(mRS1以下、NIHSS1以下、BI95点以上)は29%vs8%と優位に良かった。ただmRS2以下(歩ける)のは52%vs44%とあまり変わりないところを見ると、「良くなる人を更に良くした」という結果だと思われる。1年後に十分な歩行能力を回復できなかった人が50%いて、この治療法ではこれらの患者を回復させられず、慢性期患者をどうやって回復させるかは今後の課題だと思われた。この薬を用いて現在日本で治験が進行中で有り、その結果が待たれる(Treasure研究)