脳梗塞に対する幹細胞3次元構造体の効果

Transplantation of 3D MSC/HUVEC spheroids with neuroprotective and proangiogenic potentials ameliorates ischemic stroke brain injury
Biomaterials. 2021 Mar 24;272:120765. doi: 10.1016/j.biomaterials.2021.120765. Online ahead of print.

Abstract
脳梗塞に対する細胞治療の問題点は移植する細胞の生存率と生着である。今回間葉系幹細胞と血管内皮細胞を3次元構造化(Spheroid)し、幹細胞の混和液と比較した。3次元構造にすることによって神経保護・神経新生効果が高まり機能回復が得られた。

Figureの説明>
幹細胞(赤)と血管内皮細胞(緑)が良い感じに混ざって幹細胞&血管細胞おにぎりが出来ている。
脳内に移植した際に幹細胞単独(上のCell suspension)ではあまり細胞(赤)が生着していないが、Spheroidはたくさんの細胞が生着・遊走している。

Introduction
脳梗塞に対する細胞治療には期待が大きいが移植される細胞にはいくつかの問題がある。①細胞回収時の足場不在によるApotosisAnoikis)、②移植時の細胞針通過経路を通じた漏れ、③脳環境が低酸素状態など細胞生存に悪い。幹細胞の3次元構造化(Spheroid)はこの問題を解決できる可能性があるので今回脳梗塞モデルで検討した。

Methods
臍帯血由来の間葉系幹細胞MSCと血管内皮細胞を温度感受性ハイドロゲルをコーティングしたDishに同数播種する事でSpheroidが作成された。出来たSpheroidin-vitroで免疫染色・OGD下での生存率・細胞遊走能・軸索伸長能・血管構造能を確認し、in-vivoで脳梗塞モデルにDay1に投与し生着能・MRI画像・運動機能・病理検査を行った。

Results
Spheroidは通常および低酸素状態で細胞浮遊液に比較し、多くの栄養因子(BDNFVEGF)を分泌し、細胞死抑制・遊走能・軸索伸長・血管構造構築を促進した。脳梗塞モデルに投与した場合にはより多くの細胞が脳内に生着し、梗塞巣の減少・グリア瘢痕の減少・神経新生・血管新生を促進していた。

<川堀の感想>
幹細胞と血管細胞をバラバラでは無く、おにぎり状態にして脳内に投与する事で幹細胞が安定した状態にしてあげることが出来る。それによってバラバラな幹細胞を投与するよりも効果が高かったという研究。我々も同様の研究を進めており非常に参考になるデータであった。ただこの実験は脳梗塞Day1に投与していて、実際の臨床応用でDay1で脳内投与は不可能であり、時間が経った状況でも効くのかについては検討が必