脊髄損傷後の腸内細菌の血中移行(Bacterial translocation)は48時間で生じる

Study of bacterial translocation from gut after paraplegia caused by spinal cord injury in rats.
Liu J, An H, Jiang D, Huang W, Zou H, Meng C, Li H.
Spine (Phila Pa 1976). 2004 Jan 15;29(2):164-9.

Abstract
脊髄損傷後の腸内細菌による菌血症(Bacterial translocation)をラットで調べた。脊髄損傷後に腸・血液・リンパ節・肝臓・膵臓を採取し、毒素検出、細菌培養、免疫染色を行ったところ、脊髄損傷24-48時間後に細菌毒素と菌が検出された。脊髄損傷後には早期の抗生物質投与が有効かもしれない

Figureの説明>
脊髄損傷後に血中エンドトキシンが12時間は変わらないが2448時間後には大きく変わる
他の臓器内に腸内細菌が確認された率。48時間で多くの臓器に確認できる。

Introduction
脊髄損傷や腸の手術によって腸管の運動障害が生じ、それによって腸内菌の増殖・血中移行(Bacterial translocation)が生じることが分かっている。今回それをラット脊髄損傷モデルでも生じるかどうかについて検討した。

Methods
Wisterラットで皮膚上からT7-8の椎間孔を針を通過させ、針を動かす事で脊髄を損傷させた。12,24,48時間後に採血(下大静脈)、肝臓、すい臓、リンパ節、小腸内容物を採取し培養および病理検査(HE染色・電顕)を行った。培養は1mlの血や臓器を細菌培地で育て、菌が出たら血液培地に再播種し菌種を同定した。

Results
血中エンドトキシンレベルは12時間は違いが無かったが24hさらに48hでは有意な差を認めた。また24時間までは臓器内に細菌は確認できなかったが、48時間では血50%、リンパ節100%、肝臓62%、すい臓75%に認められた。また臓器の病理でも48時間では炎症と障害が認められた。

<川堀の感想>
脊髄損傷後に指摘されていた菌血症が動物モデルでも証明された論文。ただ実験のQualityおよび信頼性は低い。