脳梗塞にMSCの出すエクソソームは有効

Small extracellular vesicles secreted by human iPSC-derived MSC enhance angiogenesis through inhibiting STAT3-dependent autophagy in ischemic stroke
Yuguo Xia, Xiaozheng Ling, Guowen Hu, Qingwei Zhu, Juntao Zhang, Qing Li, Bizeng Zhao, Yang Wang & Zhifeng Deng
Stem Cell Research & Therapy volume 11, Article number: 313 (2020)

Abstract
MSCiPSより作成)から分泌されたエクソソーム(EV)が脳梗塞に治療効果があるかを検討した。EV投与はvitrovivoの脳梗塞モデルで梗塞巣縮小・運動機能改善・血管新生・細胞移動向上が得られた。その機序はSTAT3活性化→Autophagy抑制→血管新生であった。

Figureの説明>
エクソソームの証明方法A)エクソソームの電子顕微鏡写真、B)サイズの分布、C)表面抗原

エクソソームを投与することで脳梗塞巣の縮小、運動機能の改善がえられた

HUVEC(核が青)の細胞質にEVwith DiL赤)が取り込まれているのが分かる。コントロール(ただDiLのみ投与)では取り込まれていない

STAT3を抑制することでIn-vitroのEVの効果が弱められている。

Introduction
間葉系幹細胞(MSC)は脳梗塞に有効と考えられているが、加齢による機能・分裂低下などの問題がある。そこでiPS(無限増殖可能)からMSCを作成することを着想した。今回そのMSCが分泌するEVが脳梗塞にどのように効果をもたらすかを、血管新生・Autophagyの観点から検討した。

Methods                                              
iPS細胞からMSCを誘導し、その培養液から超遠心でEVを取得(透過顕微鏡・サイズ・表面抗原で評価)。EVはDiRもしくはDioで蛍光標識した。ラット脳梗塞モデルに4時間後にEV(1x10e11/500ul)を投与し運動機能等を評価。In-vitroではEV±のHUVECにおいて膜透過性と血管形成を評価し、AutophagyはSTAT3の阻害±で検討した

Results
EV投与で梗塞巣縮小・運動機能改善が見られた。脳内にEVは確認され、血管新生も有意に亢進していた。In-vitroではEV投与でHUVECの移動能・チューブ形成能が向上した。EV投与でHUVECautophagyが低下(電子顕微鏡・Western)し、autophagyに重要なSTAT3をブロックすると移動能やチューブ形成能などが抑制された。

<川堀の感想>
MSCを超遠心して取り出したエクソソームは脳梗塞に保護的に作用し、その効果はAutophagyの抑制であるという結論であった。エクソソームの効果は多岐にわたるため、Autophagyを抑えて血管新生をきたすというのは少し言い過ぎの様な気がした。エクソソームは今後も発展が期待できるが、エクソソームの中に何が入っているかは完全に突き止められておらず、今後の発展が期待される。MSCをiPSから作る事で無尽蔵に作れる様になるというアイデアは面白い(コストを度外視すれば)。
この論文は誤字脱字が多くて、チェックしてから発行したはずの雑誌会社(Stem cell research & therapy)の質はいまいち