脊髄損傷後のマイクログリアは壁を作成し損傷を軽減する
Microglia are an essential component of the neuroprotective scar that forms after spinal cord injury.
Bellver-Landete V, Bretheau F, Mailhot B, Vallières N, Lessard M, Janelle ME, Vernoux N, Tremblay MÈ, Fuehrmann T, Shoichet MS, Lacroix S.
Nat Commun. 2019 Jan 31;10(1):518.
<Abstract>
マイクログリア(MG)とマクロファージ(Mφ)の区別は難しいが、今回その働きの違いを脊髄損傷で評価した。MGは脊損後2週間以内に、損傷周囲に移動・分裂し、浸潤してくる白血球と神経細胞の間に壁を作って神経細胞を保護していた。MGを除去すると防御機能低下&神経ダメージ増悪し、MGを過剰発現させると保護力がアップした。
<Figures>
せき損後14日目くらいにMG(赤)が損傷内部のボーダーに集積して、内部の好中球(緑)が外の正常神経細胞(青)に行くのをブロックしている
様々な抗体情報(研究の際に重要になる)
<Introduction>
MGは胎生期に脳内に入り自己増殖していて血中Mφとは違うと考えられているが、損傷脳に入ってきたMφはMGと同じマーカーを発現する事から区別が難しく、各々の詳細な働きは不明である。今回遺伝子改変によってMGとMφを分ける事に成功したので脊髄損傷におけるMGの働きを評価した
<Method>
脊髄のMGのみTdTを発色したマウスを作成し、T9レベルの脊髄損傷を作った。MG除去は胎生期のCSF1R阻害剤(PLX5622)、BBB透過性はFITC、細胞分裂はBrdU、アストロサイト瘢痕抑制はIGF-1R inhibitor、MGの増殖はMCSFを用いた。各種の抗体を用いて免疫染色等を行った。
<Result>
脊髄損傷後4日目からMGの活性化が始まった。分裂ピークは7日、移動・集積ピーク14日目だった。MGを脊髄損傷から6日以内に機能低下させた場合のみ運動機能が悪化し、ゲルにMG活性化物質を入れて損傷脊髄に投与すると機能回復を得た
<川堀の感想>
マイクログリアが急性期(発症1週以内)は損傷部位と正常部位の間に入って国境警備をする事で過剰な白血球の浸潤をブロックし、またより強固なアストロサイトの壁を外側に築く作用を果たしている事が分かった(良い役割)。概ね了解可能。たくさんの抗体情報があったので研究に役立つ。