くも膜下出血後の持続髄液灌流療法
Prospective Trial of Cerebrospinal Fluid Filtration After Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage via Lumbar Catheter (PILLAR).
Stroke. 2019 Sep;50(9):2558-2561.
Blackburn SL, Grande AW, Swisher CB, Hauck EF, Jagadeesan B, Provencio JJ.
<Abstract>
くも膜下出血(SAH)後の血の混じった髄液を体外でフィルターし綺麗にして再び髄腔内に戻す機械の安全性の研究。13人に発症24時間後に挿入し、15時間で600ml程度の髄液を濾過(脱:腰椎→入:胸椎)した。髄液の赤血球数は53%、タンパク質71%、脳槽血腫は47%減少した。3件の軽い合併症が存在した。
<Figureの説明>
左)機械のシェーマ。腰椎レベルから抜いたものを胸椎レベルに戻しても脳内への十分な循環は得られないかもしれない。右)灌流後のCT残存血液、赤血球、タンパク質:全て低下している
<Introduction>
くも膜下出血で髄液に出た赤血球は数日で分解されサイトカインが放出され遅発性脳梗塞を誘発する。SAH早期に髄液から赤血球を除くことが出来れば予後が改善出来る可能性があり、腰椎ドレナージから髄液を出す治療が行われているが、より強力に髄液を濾すことが出来る機械を用いて検討を行った(PILLAR研究)。
<Methods>
企業治験・単群・多施設研究。13例のくも膜下出血患者(コイル8、クリップ5)。腰椎から2ルーメンのカテーテルをいれて、腰椎から髄液を抜いてフィルターして胸椎に戻す。髄液フィルターは24時間までとし、フィルター廃液量は12-15ml/h。合併症・血腫除去率・髄液タンパク量などを評価した。
<Results>
手術24時間後にカテが留置され、その後約15時間フィルターされた。髄液は30-96ml/hで抜かれ、トータル約600mlの髄液がフィルターされた(180-1400ml)。機器に起因する合併症はなく、吐き気が2名、下肢の痛みが1名。効果として髄液腔内出血・赤血球・タンパクは治療後に低下していた。今後効果を見る研究に進む。
<川堀の感想>
古くからくも膜下出血後に髄液を抜いてくも膜下腔に出た赤血球を除去する治療は行われてきて、日本でも脳室ドレナージから人工髄液を入れて腰椎ドレナージから抜く持続灌流がされていた。ただ、今回専用のカテーテルを用いて強力に濾過する治療の安全性が確かめられ、今後大規模研究が進むことは、この灌流法の効果をはっきり示す意味で非常に重要である。産学の連携の重要性を再認識させられる研究だ。