細胞の冷蔵保存において振動は細胞ダメージを増やす

The sensitivity of human mesenchymal stem cells to vibration and cold storage conditions representative of cold transportation.
Nikolaev NI1, Liu Y, Hussein H, Williams DJ.
J R Soc Interface. 2012 Oct 7;9(75):2503-15.

Abstract
低温保存(2-8℃)と振動(10-50Hz)によるヒト間葉系幹細胞のダメージを検討した。生存はトリパンブルー/Annexin V/propidium iodideで、表面抗原はCD29/ 44/ 105/ 106で評価した。細胞は10Hzは大丈夫だが25Hz以上でダメージを受け、CD29/44が増加していた。細胞のダメージは低温保存による膜傷害のネクローシスがメインで、振動は更にダメージを追加させた。

Figureの説明>
色々な振動による細胞のダメージのグラフ。何故か10Hzは少なく、25Hが一番低く、その後徐々に生存率が上がる。

Introduction
培養細胞の輸送が注目されている。今までは凍結乾燥か凍結が用いられてきたが細胞ダメージが大きい、そのまま使用できる臨床利用を考えると非凍結が望ましく、2-8℃の輸送が大事。しかし低温と振動によるダメージを検討しなくてはならない。今回臨床応用を目指して細胞浮遊液の状態で低温・振動を与え細胞のダメージと表面抗原マーカーを測定した。

Methods
細胞はLonzaのヒトMSC106/mlで専用メディウムに溶かした状態で使用。振動パターンは様々(10Hz-5000Hz)。細胞を先に144時間冷蔵した後に2550Hzで振動させたものも準備。細胞数カウントはCedexCountessを使用し、生存率は早期アポトーシス(annexin V)、アポトーシス(annexin&Prodium Iodide)、死細胞(Trypan bluePI)で分類した。間葉系幹細胞マーカー(CD29,44, 105, 166)の変化もFACSでチェックした。

Results
細胞は低温保存で徐々にdead cellが増えて、96時間で30%くらいになった。さらに振動を与えると25Hz単独振動が最も細胞生存率を下げた。25Hzの振動無しに比べ振動有りはdead cell(膜破壊)が多かった。また事前冷蔵なし振動24時間(生存率85%)に比べ、事前冷蔵あり振動24時間(24%)では細胞生存率が大幅に低下していた。振動によってCD29↑、CD44↑、CD105↓、CD166↓の表面マーカーの変化があった。

<川堀の感想>
細胞を4℃で輸送する際に振動が大きくその生存率に影響することが分かった。ただ10Hzは大丈夫なのに25Hzはダメな理由がなかった、エラーバーが無かったり、同じデータを何度もグラフに出したりするなど論文としてのクオリティーは低く、信頼性は低い。