脳梗塞に対するMSCの経動脈的投与のPh2治験(米国)失敗
A Phase 2 Randomized, Sham-Controlled Trial of Internal Carotid Artery Infusion of Autologous Bone Marrow-Derived ALD-401 Cells in Patients With Recent Stable Ischemic Stroke (RECOVER-Stroke).
Savitz SI, Yavagal D, Rappard G, Likosky W, Rutledge N, Graffagnino C, Alderazi Y, Elder JA, Chen PR, Budzik RF Jr, Tarrel R, Huang DY, Hinson JM Jr.
Circulation. 2019 Jan 8;139(2):192-205.
<Abstract>
MCA脳梗塞患者に対する自家骨髄幹細胞(ALD-401)の経動脈的投与のPhase2。対象は重症患者(mRS≧3)、投与は発症15日前後、偽骨髄採取&手術あり、安全性と有効性を検証。細胞投与群でDWI陽性患者(無症状)がいたが、安全性の問題はコントロールと変わりなし。ただmRS回復も改善は認められなかった
<Figureの説明>
A:mRS、B:BI、C:NIHSS。赤が実薬、青が偽薬。mRSは偽薬の方が良くなっている(有意差無し)などほとんど同じだったと考えられる。
投与した細胞数と改善には全く傾向がなかった(たくさん入れたら良くなると言うわけでは無い)
<Introduction>
骨髄間質細胞の一部でアルデヒド脱水酸化酵素を強発現する細胞(ALDH cell)は通常の幹細胞より小さく経動脈的に投与しても新たな脳梗塞を作るリスクが低く、動物脳梗塞モデルで有効性が証明されている。今回脳梗塞患者本人から取った骨髄液から分離したALDH細胞を発症15日前後に経動脈的に投与する治験を行った。
<Methods>
企業(Aldagen)治験。二重盲検・多施設試験。脳梗塞9-15日でmRS≧3の患者。発症3週までに骨髄採取を行いその2日後に経動脈的(眼動脈より遠位)にカテーテルから細胞投与(偽薬あり)。安全性が主要評価だが、mRS, NIHSS, BI, EQ-5Dを3ヶ月後と12ヶ月後に評価。当初のサンプルサイズは100例を予定。
<Results>
48人(平均NIHSS10点、実薬29人・偽薬19人)。150mlの骨髄液採取(56-190ml)でALDH細胞は300万(16万~7500万)が投与された。4名の実薬で術後MRIでDWI陽性患者がいたが症状は出なかった。安全性の問題は両群でほぼ同様であったが、機能回復(mRS。NIHSS、BI)でも有意な差を認めなかった。投与細胞数と回復に関係はなかった。
<川堀の感想>
患者本人の骨髄液を施設に運んで、ソーティングして(培養はしない)、患者にカテーテルを使って経動脈的に戻すという研究であったが、効果が無かった事が示された残念な論文。動脈的に投与するのは静脈よりもたくさんの細胞を脳内に送ることが出来る可能性があって非常に期待されていたがやはり定着しないためかダメだった。ただ自家細胞のロジスティックが成功したこととは評価される。この会社が治験前に1600億円でCytomedixにM&Aされたことは再生医療におけるM&Aが米国で盛んであることを示す。