間葉系幹細胞が分離・培養可能なことを初めて証明した論文
Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells.
Pittenger MF, Mackay AM, Beck SC, Jaiswal RK, Douglas R, Mosca JD, Moorman MA, Simonetti DW, Craig S, Marshak DR.
Science. 1999 Apr 2;284(5411):143-7.
<Abstract>
ヒト成人にも組織を新陳代謝させるための幹細胞が存在するが多くは単一組織への分化である。一方今回、骨髄から取得した骨髄間質細胞が間葉系幹細胞の性質である、①未分化の状態での培養
および遺伝子保持、②適切な刺激による脂肪・軟骨・骨芽細胞への分化が確認され、多分化能を有する幹細胞と考えられた。
<Figureの説明>
細胞を適切な培養を行うと、脂肪(左の赤)、軟骨(真ん中の茶色)、骨(右の黒)に分化した。またこれらは下のBCであるようにControlでは検出されなかった(それぞれの細胞に新たに分化した証明)
<Introduction>
ヒト胎児組織から多分化能を有するES細胞が発見されたが、もともと人には血液の元や外傷後などの組織修復を助ける幹細胞が存在するが、分化先は限られている。一方骨髄には骨や靭帯などになりうる多分化能を有する細胞が存在することがわかっているが、それを培養増殖し分化能を検討した報告はなかった。
<Methods>
成人の骨盤から骨髄液を採取し分離・培養した(1.073g/mlの比重に存在するの細胞(全体の0.001-0.01%))。FACSで表面抗原を検索し、分化能(脂肪・軟骨・骨)を評価した。また単一の細胞からも同様に3つの細胞に分化可能かどうかを検討した。
<Results>
得られた細胞はFACSでSH2/SH3/CD29/CD44/CD71/CD90/CD106/CD120a/CD124陽性、CD14/CD34/CD45陰性であった。3つのすべての細胞に分化することが出来、単一の細胞もおおむね3つに分化することが出来た(一部分化程度が弱いものがあった)
<川堀の感想>
骨髄の間質に複数の細胞系に分化できる細胞が培養増殖可能ということを初めて報告した論文。こののち、他の細胞(神経:外肺葉、内臓:内肺葉)にも分化できるという報告が出て、大きく間葉系幹細胞の研究が進んだという意味で意義深い論文。ただやはり分化の程度はESやiPSに比べると弱く、脳を完全に治せるようになるには間葉系幹細胞にもう一工夫が必要と考える