山中先生のiPSの原著

Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors.
Takahashi K, Yamanaka S.
Cell. 2006 Aug 25;126(4):663-76.

Abstract
分化した細胞でも、核内容物の交換をすると胚細胞に戻せる。しかしその際、何の因子が関与しているかはよく分かっていなかった。マウスの胚細胞とマウス成体線維芽細胞にOct3/4, Sox2, c-Myc, Klf44つの遺伝子を導入したところES細胞に類似した性質のiPS細胞を作り出すことが出来、この4つの遺伝子が重要と分かった。


Figureの説明>
A24個の候補のどれを抜いたときに細胞が育つかを検討した。3,4,5・・2210個)を抜くと育ちが俄然悪くなった。B:今度はその10個で見たところ4つの因子が重要だと分かった。C4つは全てが必要で3つにしてもコロニーは出来なかった。DMEF1010個の因子入り、MEF44個の因子入り、MEF33個の因子入りで形が3個の時だけ悪く、やはり4つの因子が必要と分かった。

Introduction
ES細胞は万能性を有するが倫理面などの問題がある。一方卵細胞に核移植したりES細胞と重合させることで万能性細胞を作り出せることから、核やES細胞の中に万能性を取り戻す鍵があると考えた。Oct3/4を初めとする転写因子タンパク質などが鍵の候補となるが、どの因子が決定力を持っているかが不明なので調べた。

Methods
ES細胞の万能性に関与していると考えられている24個の遺伝子を候補とした。細胞が胚細胞様にリプログラミングされると発現するFbx15遺伝子に抗生物質耐性を持たせた(抗生物質を混ぜても死なない細胞が目的の胚細胞)。遺伝子はレトロウイルスで導入し、作成された細胞の3胚葉分化・遺伝子発現(mRNAとタンパク)などを見た

Results
候補24個を胚性線維芽細胞に全て入れるとES様のiPS細胞が作成されたが、一つずつではダメ。色々試してOct3/4, Klf4, Sox2, c-Myc4つで作成できた(PCRmRNACHiP法でヒストンジメチル化がESに類似、マウス皮下で奇形腫(3胚葉)を形成、)した。その後成体ラット線維芽細胞でも同様のiPS細胞が作成できた。

<川堀の感想>
非常に有名な山中先生のiPSの原著。内容は難しい部分もあったが非常に勉強になった。ただ4つの因子を入れても必ずiPS細胞が出来るわけではなく、出来たコロニーを取ってくる必要があり、その効率が問題であることが分かった。この論文をスタートとして日本でも多くの再生研究がスタートした事を思うと感慨深い(我々は間葉系幹細胞だが)。