ALSに間葉系幹細胞の髄注は軽傷群では進行を抑制できる可能性がある(第3相試験)

A randomized placebo-controlled phase 3 study of mesenchymal stem cells induced to secrete high levels of neurotrophic factors in amyotrophic lateral sclerosis.
Cudkowicz ME, et al. Muscle Nerve. 2021. PMID: 34890069

Abstract
筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者に対して自家間葉系幹細胞(機能強化版)が進行を抑制できるか第3相試験(二重盲検)で調べた。ALSFRS25点以上の患者にMSC/プラセボを髄注し、ALSFRSの低下抑制具合を評価したが、違いは無かった。ただALSの軽傷グループでは回復が良い傾向があった。

Figureの説明>最初の重症度(数字が大きい方が軽い)と効果の関係を示した表。27点くらいまでは効果が見込まれたが、26点以下を入れると一気に差が無くなる。重症にはあまり効果が見られなかったという事

Introduction
ALSは進行性の神経疾患で現在有効な治療法が無い。MSCを体外で強化したMSC-NTFは先行研究においてALS患者に有効な可能性が考えられ、髄液中の各種マーカーも改善させていた。今回大規模な第3相試験を行いALS患者におけるMSC-NTFの安全性と効果を検証した(NCT03280056試験)

Methods
ALSFRS-Rスコア(48点満点・高い方が軽傷)で登録時25点以上でその後ランダム化まで3点以上低下したALS患者が対象。3回(0,2,4カ月)MSC1億個)orプラセボを髄注し、12週でのALSFRS-Rスコア低下が緩和されるかを検証した。また髄液中のVEGF/MCP-1/NfLを経時的に測定しプラセボと比較した。

Results
196名が参加し98名ずつMSCとプラセボに割り付けられ、背景はほぼ同じだった。ALSFRSスコアの低下が緩和した患者は両群で変わりなかった(MSC32%、プラセボ28%p=0.45)。ただサブ解析で軽傷群(スコア>31)のではMSC群にて低下が緩和されていた(p=0.03)。髄液中のたんぱく質は複数で変化を認めた

<川堀の感想>
治療法のない患者さんに本人から取ったMSC(特許技術で強化したとある)を髄注して症状の緩和が見られるかを検討した試験。軽傷群では症状の進行を抑えれたという事だが、完全にブロック出来たわけでは無い事は少し残念。ALSは初発症状から死亡まで3.5年という非常に重い病気であり新たな治療法が出る事を真に願っている