重症頭部外傷への低体温療法
Effect of Early Sustained Prophylactic Hypothermia on Neurologic Outcomes Among Patients With Severe Traumatic Brain Injury: The POLAR Randomized Clinical Trial.. JAMA. 2018 Dec 4;320(21):2211-2220. Cooper DJ, Nichol AD, Bailey M, Bernard S, Cameron PA, Pili-Floury S, Forbes A, Gantner D, Higgins AM, Huet O, Kasza J, Murray L, Newby L, Presneill JJ, Rashford S, Rosenfeld JV, Stephenson M, Vallance S, Varma D, Webb SAR, Trapani T, McArthur C; POLAR Trial Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group.
<Abstract>
重症頭部外傷に対して予防的低体温療法が予後を改善するかRCTで検討した(POLAR-ACT研究)。低体温(33-35℃を72時間以上、外傷後2時間で開始)/通常温(37℃)に250人ずつを割り付け、複温はゆっくり行った(23時間)。予後良好群は友に50%前後で変わりが無く、低体温療法は有効ではなかった。
<Figureの説明>
低体温を行っても常温に比べて全く予後を改善しなかった。
<Introduction>
重症頭部外傷の50%は障害を残すためより良い治療法が求められている。頭蓋内圧が亢進してから低体温にする方法は有効では無いが、2次損傷(炎症)を防ぐために早期に低体温療法を行う事の有効性が一部で報告されていてメタ解析でも弱い推奨がなされている。しかし過去の試験は不十分のためより厳密な検討を行った。
<Methods>
オーストラリアなど5カ国で行われた。患者の条件は18-60歳、GCS9以下。低体温は4℃生食を2000ml投与し35℃に下げ、出血等無ければ33℃まで下げた。最低72時間低温をキープし、複温は頭蓋内圧が20mmHg以上に成らなければ0.25℃/hで戻した。6ヶ月後のGOS-Eの5-8(軽い障害があっても自立)の率で評価。
<Results>
患者平均35歳で外傷後2.5時間で35℃、10時間で33℃に到達し、72時間そのままで、複温に23時間かかった。6ヶ月後の予後良好(48%)、死亡率(20%)、人工呼吸期間、肺炎率(50%)は変わりなかった。ただし一部Cross-overがあったためそれを勘案すると肺炎率は低体温で高かった(70%vs57%)
<川堀の感想>
外傷性脳損傷の低体温はかつて未来の治療法として注目を浴びたが、ほぼ完全な形で施行されたRCTで否定されたことは残念である。この試験は常温群でも37℃以上になった場合には37℃まで温度を下げていて、これが高温になると予後が悪くなる群を除外したことが理由と考える。外傷の原因が車(30%)、バイク(10%)、自転車(10%)、歩行者(10%)で交通外傷が多いことは理解できるが、アルコール反応陽性(44%、内泥酔レベル35%)というデータは余りに悲しい。