脳梗塞慢性期患者に対するブタ神経幹細胞移植

Neurotransplantation of fetal porcine cells in patients with basal ganglia infarcts: A preliminary safety and feasibility study. Cerebrovascular diseases 2005; 20: 101-107
Savitz SI, Dinsmore J, Wu J, Henderson GV, Stieg P, Caplan LR.

Abstract>米国、Savitzらのグループ。5人の慢性期脳梗塞患者(部位:基底核)にブタ胎児神経幹細胞を投与し、安全性と効果を見た。3人は術後問題なかったが、4人目は3週後に一過性の運動障害が出現し、5人目で1週後にけいれんを生じた(移植部位では無いところにMRIで高信号が出現していた)。試験は安全性の観点から中止された。

Figureの説明>

移植方法の説明。大枠我々の治験と同様である。ただ我々が工夫しているような脳溝を避けるなどの記載はない。

Introduction
脳梗塞患者への脳内幹細胞投与は安全・有効だが、神経幹細胞は倫理的問題から使用が難しい。ブタ胎児の線条体原基(外側基底核隆起):LGEを脳梗塞モデル動物に投与したところ神経細胞分化、神経回路復元、機能回復が得られた。脳梗塞慢性期で症状が固定した患者にこの細胞を投与し安全性・有効性を評価した。

Methods
ブタ由来LGE細胞はGenvec社製。MHC-I抗体で抗原性を消去・免疫抑制不要とした。2000万個/1ml20mMグルコース&0.9%食塩水液)を前日作成、4℃で保管。患者1-45トラクト計5000万個、患者51トラクト8000万個。NIHSS,mRS, MRIで評価

Results
25-52歳の5人(発症1.5-10年)が参加。最初の3人は投与後4年まで合併症なし。4人目は投与20日目に脳浮腫が発生。バイオプシーでブタDNAはなく、手術による静脈閉塞と診断、ステロイドで改善した。その後6ヶ月後にけいれんを生じた。5人目は1週後に高血糖とけいれんを生じた。5人中3人で軽度の機能回復を得た。

<川堀の感想>
同種(別のヒト)でも免疫拒絶の問題があるのに、異種(ブタ)を使っていることに驚いた。けいれんはそのせいだろうか?。効果はある程度は認められたとされているが、入っている患者が25-52歳と若いこと、NIHSS4-11と脳梗塞軽~中等症を入れていることなど自然改善もある程度考えられため、本当に効果があったかは不明。