糖尿病薬による脳ヘルニア減少効果
Safety and Efficacy of Intravenous Glyburide on Brain Swelling After Large Hemispheric Infarction (GAMES-RP): A Randomised, Double-Blind, Placebo-Controlled Phase 2 Trial
Lancet Neurol. 2016 Oct;15(11):1160-9.
Kevin N Sheth, et al.
<Abstract>
グリベンクラミド(糖尿病薬、以下G群)の静脈投与で重症脳梗塞患者の予後が改善するかを検討した。脳梗塞から10時間以内の86人を無作為二重盲検でG群か偽薬に割り付けた。合併症率は両群で変わりなかったが、90日後の予後良好(mRS0-4)の割合も41%vs39%と変わりなかった。
<Figureの説明>
上のグラフ:G群(下)は偽薬(上)に比較し予後良好の頻度が少し増えている。
下のグラフ:生存率(青)もG群(赤)は偽薬群より良い傾向がある(統計学的有意差無し)
脳の腫れはG群(左)が偽薬(右)に比べ少ない
<Introduction>
重症脳梗塞の合併症の一つに脳腫脹に伴う脳ヘルニアがある。減圧手術の効果が一部示されているが、手術時には既に脳の損傷を来していることが多く、最初から腫れを抑える治療法が望まれる。糖尿病薬のグリベンクラミドは動物・ヒト研究で脳浮腫を抑制することが分かっているので今回Phase2で検討した。
<Methods>
GAMEDS-RP試験は無作為二重盲検法(グリベンクラミド(計8mg)・偽薬が1:1)で、患者条件は脳梗塞10時間以内、脳梗塞サイズ82-300cm3、tPAはOKだが血栓回収ダメ。結果は90日後のmRS0-4やmidline shiftの大きさ、合併症(低血糖)などを比較した。
<Results>
77人の患者さんをG群・偽薬群で分けたが患者背景は同じだった(発症9時間、NIHSS20点)。脳腫脹はG群で少なかったが、予後良好(mRS0-4)の頻度(41%vs39%)は変わりなかった。血糖はG群で低い傾向があったが、重篤な合併症の頻度は変わりなかった。
<川堀の感想>
糖尿病の薬で認可されているグリベンクラミド(オイグルコン)の静脈投与によって脳の腫れを抑えて予後を改善するかを見た研究。脳の腫れは薬の投与によって抑えられたが、残念ながら予後良好な患者さんを増やすことは出来なかった。この後のサブ解析でG群の有効性(腫れによる死亡減少、NIHSS回復程度)も報告されている。ただNIHSS20点前後の患者は非常に重症であり、減圧は免れたが、この薬によって日常生活に戻れるほど回復できたわけでは無いことは理解しておくべきである。