後方循環のSAHに対する急性期パイプライン留置
Pipeline embolization in patients with posterior circulation subarachnoid hemorrhages: Is Takotsubo cardiomyopathy a limiting factor?
Baker C, Grandhi R, Griessenauer CJ, Dmytriw AA, Kapadia A, Yang VXD, Ghorbani M, Chen K, Aziz-Sultan MA, Rinaldo L, Lanzino G, Brinjikji W, Taussky P.
World Neurosurg. 2020
<Abstract>
BA/VAの動脈瘤・解離によるSAHに対するパイプライン(オフラベル)の成績とたこつぼ心筋症の発生頻度について多施設研究を行った。23人の患者(解離8、仮性瘤4、動脈瘤7、Fusiform1)が該当し91%で血流遮断が得られたが、13%でたこつぼ心筋症を併発した。5名が死亡したが生存者の予後は良好であった。
<Figureの説明>
全患者のプロファイル。いろいろなタイプの患者に対してパイプラインが成功している。
<Introduction>
後方循環のSAHは深部・穿通枝多数・高再出血率など治療に難渋するためオフラベルではあるがパイプラインを使用する術者も出てきているがその成績は不明である。またたこつぼ心筋症はくも膜下出血後4%程度発生する重篤な合併症であるが、後方循環にパイプラインを置いた時の記録がないため検討した。
<Methods>
欧米中東の多施設における後方視的検討。後方循環SAHの発症起点は不問で48時間以内に治療した18歳以上の患者。治療成績・たこつぼ心筋症の有無を検討した。手技はヘパリン化後に留置し、術後にDAPT開始。
<Results>
23人(24~75歳、解離8/仮性瘤8/動脈瘤7/Fusiform1、VA系10/BA系8、最大31mm)、GCS3-15(中央14)。パイプライン留置で74%が完全閉塞、26%が部分閉塞。再治療は2名(パイプライン1/開頭1)。合併症は脳梗塞4人(無症候2/症候2)・出血2人(無1/有1)。5名が死亡。平均入院は19日。たこつぼ心筋症は3名(23%)に発症したが治療で改善した。
<川堀の感想>
後方循環のSAHに急性期にパイプラインを留置する治療法を行っていることにびっくりした。急性期にステントが詰まったりするのかと思ったが、成績も考えていたより遥かに良いものであった。FusiformのSAHに治療が可能だったこともびっくり。ただ細かい画像データは提示されていないから鵜呑みにはできないかもしれない。ただ今後性能の良いステントが出ればもっと成績は良くなるわけだし、血管内の進歩はすさまじいものだと感じた。