外傷性脳損傷と腸内細菌の関係
Altered Fecal Microbiome Years after Traumatic Brain Injury.
J Neurotrauma. 2020 Jan 17. [Epub ahead of print]
Urban RJ, Sheffield-Moore M et al, Uni. of Texas.
<Abstract>
頭部外傷後の慢性期患者では血中アミノ酸・ホルモンなどが変化していて腸の異常(腸–脳相関)が考えられる。患者と健康対象のうんちを調べ細菌叢(16S rRNA遺伝子解析、メタゲノム解析)の変化を見ると、Bacteroidetes門・目に所属するPrevotella↓、Bacteroidies↓が見つかった。特にPrevotellaは血中アミノ酸低下と関連していた
<Figureの説明>
分類は門(Phyla)→網(Class)→目(Order)→科(Family)→属(Genus)→種(Species)と細かくなる
(上)健康(青)と頭部外傷患者(赤)での腸内細菌門の違い。Bacteroidetes門が下がっていて、Firmicutes門などは上がっている。(下)Prevotellaceae科(Bacteroidetes門)が下がっていて、Ruminococcaceae科(Firmicutes門)が上がっている。
血液中のアミノ酸の量。トレオニンやトリプトファンなどが20%ほど健康対象者より低い
<Introduction>
近年、慢性期頭部外傷患者で血中アミノ酸などの変化が報告されている。腸には1000種類以上の細菌が存在し、細菌叢の変化で腸内皮が損傷されるとTight junctonの破綻・透過性亢進、炎症、吸収障害などを来すと考えられているため、頭部外傷と腸内細菌叢の関係(腸–脳相関)を患者と正常で調べた
<Methods>
米国2施設で慢性期頭部外傷(非自立)22人と健康対象18人からうんちと血液を採取。うんちの中の細菌叢を16S rRNA遺伝子解析(次世代シークエンサー)で行い、OTU分類して、UniFracとヒートマップ解析した。さらにShotgunシークエンスで菌の詳細評価を行ったのち、血液のアミノ酸との関係も調べた。
<Results>
患者背景に大きな違いは無かった(外傷–健康、施設間)。UniFrac検定で細菌叢は外傷と健康で違いがあり、構成比ではBacteroides門低下、Firmicutes門増加などを認めた。そのさらに詳しくはPrevotella種(88分の1に低下)、Closttridium種(6分の1に低下)、Akkermansia種(21倍増加)があった。血液ではトレオニンやトリプトファンが下がっていて、これはPrevotella種の低下と相関した。
<川堀の感想>
腸内細菌&次世代シークエンサーの事を全然理解していなかったため非常に読解に苦労した。結論は頭部外傷患者は慢性期になっても腸内細菌が健康な対象者と違い、それに基づくものかは不明であるが、血液中の必須アミノ酸が不足していた。脳の損傷による腸運動の制限などが関係している可能性が考えられたが、今回はただ結果のみを報告したもので、その因果関係は依然不明のままである。ただ近年腸細菌の持つ免疫機能への関与が非常にクローズアップされており腸を治すことで脳を治す時代が来る可能性がある。