一時的絶食(fasting)は幹細胞の機能を向上させる

Fasting Activates Fatty Acid Oxidation to Enhance Intestinal Stem Cell Function during Homeostasis and Aging.
Mihaylova MM, Cheng CW, Cao AQ, Tripathi S, Mana MD, Bauer-Rowe KE, Abu-Remaileh M, Clavain L, Erdemir A, Lewis CA, Freinkman E, Dickey AS, La Spada AR, Huang Y, Bell GW, Deshpande V, Carmeliet P, Katajisto P, Sabatini DM, Yilmaz ÖH.
Cell Stem Cell. 2018 May 3;22(5):769-778

Abstract
一時的なfasting(栄養飢餓)が細胞の機能向上に効果有り。腸幹細胞(若&老)を24時間のfastingにしたところ脂肪酸酸化機能(FAO)が発動し細胞機能向上が得られた。またFAO機能を抑えるとfastingの効果もなくなったが、長期のFAO機能抑制は細胞に悪影響だった。


Figureの説明>
上の絵:絶食するとfatty acidが作られ幹細胞内でPPARの活性化とそれに続くCPT1Aタンパク質が作られる。それがミトコンドリアの活性を果たす。
下の絵:絶食にすることでfatty acidが増えて機能が亢進される。また年寄りではPPARを増やす薬剤を追加することでも機能向上出来た。

Introduction
幹細胞は取得する栄養によって遺伝子発現が変わってくる。様々な生物で短期のfastingは良い効果をもたらすが、幹細胞に対する短期間のfastingがどのような効果を示すかは分かっておらず、また年を取った幹細胞は通常再生能力が下がるがfastingによる復活効果は不明である。

Methods
マウス細胞を用いて、管形成機能で幹細胞機能を評価。変化はmRNAの変動を調べてgene set enrichment analysis (GSEA)で評価した。

Results
幹細胞を通常と絶食24時間マウスから取って消化管形成力を調べたところ絶食幹細胞の方が良かった。理由はmicroarrayGSEAをしたらPPAR(特にCPT1の発現亢進・CPT1は通常時は関係ないが絶食時のみ必要)が関与していた。年寄りマウスの細胞でも絶食orCPT1を活性化で機能亢進した。

<川堀の感想>
24時間の絶食がCPT1遺伝子発現を亢進し、幹細胞機能を亢進させるという報告であった。我々の幹細胞も高齢者から取ることが多いことから、fastingによって保存力/脳内移動能/栄養因子分泌力/分化力が向上するかをチェックする価値があると思われた。一部難解な部分も有り理解不十分な可能性有り。