エクソソームの経静脈投与では脳内に到達するのは0.01%くらい

Quantitative Biodistribution and Pharmacokinetics Study of GMP-Grade Exosomes Labeled with 89Zr Radioisotope in Mice and Rats
Hojun Choi et al. Korea
Pharmaceutics. 2022 May 24;14(6):1118.

<Abstract>
エクソソームの体内分布は臨床応用に重要。蛍光よりもアイソトープ標識の方が体内の深い部分も観察できるので検討した。エクソをジルコニウム89(Zr)で標識したところ肝臓>脾臓>他臓器と分布した。Zr単体では血中からはすぐに消失したが、エクソZr7日以上存在し細胞に取り込まれたと考えられる

 <Figures>
脳内へのエクソの取り込み率。最大で8時間後に0.1%だが、メスは0.05%と半分程度だった。

<Introduction>
細胞が分泌するエクソソームを治療に用いる基礎・臨床研究が進められている。エクソは静脈投与後数分で血管内から消失すると言われてるが、蛍光標識では深部が見にくい。今回エクソにアイソトープの89ジルコニウムを入れて標識する事でより正確性の高い体内分布試験を行った。

 <Method>
細胞上清:光を当てる事でするsrIkB(炎症性サイトカイン誘導因子NFkbを選択的に阻害)を多く含むエクソソームが作り出されるExpi細胞を使用し、クロマトグラフィー法で抽出した。89Zrをエクソ表面に膜タンパクを介して結合させ、結合率・電化変化・In-vitro細胞取り込み率を評価し、ラットとマウスに静脈投与してPETで臓器への集積を確認した。

 <Result>
エクソはCD9/81などの規格を満たし、標識前後で変化はなかった。静脈投与で7日間観測でき、肝臓73%・脾臓5%にほとんどが集積した。Zrのみ投与は2日でなくなった(=エクソは細胞内に取り込まれる)。脳への集積はPET検査で最大0-0.1%、脳切片のカウンター測定だと0.01-0.04%の集積だった

 <川堀の感想>
ラットとマウスの違いはあるが、ラット脳への集積は体外PET測定では0%、脳切片でも0.01%と非常に少なかった。ただエクソは炎症に集積する傾向はあり今回は健康動物なのでそこは引き算して検討する必要が有ると思うが、それでも低い。我々は経鼻的投与を研究中でこちらも候補になると考えている