くも膜下出血急性期にステントを置いても大丈夫か(メタ解析)

Stent assisted coiling versus non-stent assisted coiling for the management of ruptured intracranial aneurysms: a meta-analysis and systematic review.
Zhang X, Zuo Q, Tang H, Xue G, Yang P, Zhao R, Li Q, Fang Y, Xu Y, Hong B, Huang Q, Liu J.
J Neurointerv Surg. 2019 May;11(5):489-496.

Abstract
くも膜下出血に対するコイリング手術でステント併用(S)と非併用(N)の成績を論文のメタ解析で比較した。8つの報告(1408例)を解析。直後閉塞率はN64 vs 54%)が良かったが、フォロー時の閉塞率(73vs64%)と再治療率(5vs17%)Sが良かった。周術期合併症はNが少なかったが(20vs13%)、死亡率(6vs6%)や予後良好群(86vs88%)は違いがなかった。

Figureの説明>
ステントを使うと1.8倍ほど脳梗塞のリスクがあがる
予後良好群の頻度はステント併用してもしなくても変わらない

Introduction
脳動脈瘤治療(特に未破裂)でステントを併用すると閉塞率がアップし再治療率が低下すると言われているが、使用には抗血小板薬が必須であり、くも膜下出血(破裂瘤)の場合には周術期の再出血が懸念される。一方で抗血小板薬無しでは血栓症のリスクがある。今回メタ解析で過去に報告されている破裂瘤に対するステント併用と非併用の成績を比較した。

Methods
PRISMAに従って文献を検索し2827論文がHitした。その中でステント併用と非併用の比較を行っている論文かつ、動脈解離などの症例を除いた8論文が選択された。論文の質はNewcastle-Ottawa scale9点満点)で評価した。

Results
論文の質はNOS9点とOK。ステント(S499例・非ステント(N)909例が選択された。直後の完全塞栓率はN群が高かった(64%vs54%)が、長期では逆にSが高かった(73vs64%)。その結果再治療もSで低かった(5vs17%)。想定された通りSでは治療合併症率が高かった(20vs13%)が、全体の成績は同じだった(死亡率6%、予後良好群87%)

<川堀の感想>
SAHの急性期コイルにステントを置くとステントに血栓が着くことによる塞栓性合併症や抗血小板薬による出血性合併症が増える(といっても20vs13%なので大して変わらない)が、全体の成績には影響しないほぼ想定される結果であった(そもそも破裂時の脳の損傷がかなり大きいウェイトを占めるため)。良いとこ取りの治療法として超急性期はコイルで再破裂を抑制し、落ち着いたところでステントを併用するStepwiseの治療法がベストな気がする。ただ今回の論文はバイアス(ステントを置く群は動脈瘤の形が悪いなど)が考慮されていないので鵜呑みには出来ない。

Discussionに面白い日本からの論文がRefされていて、それによるとSAHの患者で事前に抗血小板薬を使用していたかどうかと予後に関しての報告で、60歳以下は予後を良くするが、70歳以上は悪くするというデータもあった。出血性合併症による回復の程度が関係しているのだろうか。