脳梗塞に対するエクソソーム投与はマイクログリアの活性(M1化)を防ぎ効果をもたらす。
Extracellular vesicles from adipose-derived stem cells promote microglia M2 polarization and neurological recovery in a mouse model of transient middle cerebral artery occlusion.
Hu X, et al. Stem Cell Res Ther. 2022. PMID: 35057862
<Abstract>
脳梗塞後に脂肪由来エクソソームを静脈投与したところ運動機能・認知機能・萎縮・血管脱落が抑えられ、新規血管も多く生じていた。脳内マイクログリアのM1が減ってM2が増えたことが理由だが、その機序としてエクソソーム内のmiRNAがSTAT1とPTENを抑制したことが考えられる。
<Figureの説明>
A:マイクログリアに エクソソーム(PKH)を投与すると取り込まれる。細胞が障害されていないときはM1化を抑制しない(B)が、細胞が障害されてM1化が進行するとそれを強力に抑制した(C)。
<Introduction>
脳梗塞治療において最初に炎症を惹起するマイクログリア(特にM1悪玉)の制御(悪玉M1を減らし、善玉M2を増やす)は重要な治療ターゲットである。MSCの分泌物のエクソソームEVはmiRNAを介して心臓領域などでM2マクロファージを増やす働きが証明されているので、脳梗塞で検証した。
<Methods>
エクソソームはマウス脂肪由来MSCを超遠心回収(評価:CD63/TSG101)し、スレッドモデル脳梗塞マウスにDay1-7連日100ug静脈投与。運動機能・脳萎縮・免疫染色(CD16(悪玉M1)/Arg1(善玉M2)/Iba1(M1&M2)/MBP(ミエリン)/CD31(血管))を行った。in-vitroでマイクログリア細胞/BV2細胞にLPS・OGDの負荷を加えた状態でエクソソームを投与し、マイクログリアの変化を評価。miRNAシークエンスで内容物を見つけ、BV2細胞にmimicを投与して同様にM2変化があるかを検討した
<Results>
エクソソーム投与で脳梗塞マウスで運動機能・梗塞サイズ・血管新生・M1↓M2↑と良好な結果が得られた。In-vitroでも同様にエクソソーム投与で障害BV2細胞でM1↓M2↑を認めた。エクソソーム内のmiRNAシークエンスでmiR200、93、363などが発現亢進していて、これらはPETNとSTAT1の抑制作用があることが分かった
<川堀の感想>
脳梗塞に対してエクソソームが効果がある事を証明し、更にエクソソーム内に入っているもので、特定のmiRNA(14個くらいある)が効果をもたらした可能性を証明するなど非常に深い研究。シークエンスの部分は理解が難しいが、大変勉強になった。