細胞低温保存時の生存率向上に非凍結タンパクが有用
Effect of Antifreeze Glycoproteins on Organoid Survival during and after Hypothermic Storage. Huelsz-Prince G1, DeVries AL2, Bakker HJ3, van Zon JS4, Meister K5. Biomolecules. 2019;9,E110;doi: 10.3390/biom9030110.
<Abstract>
幹細胞(単体C、若いオルガノイド組織Y、成熟オルガノイド組M)を4℃保存する際の非凍結糖タンパク(AFGP)の効果について検証した。通常だと24時間でMは死亡するがCは48時間まで生存した。AFGPを入れると細胞表面に緩く結合し、どのグループも72時間まで生存した。
<Figureの説明>
細胞が高度(C→Y→M)に成ればなるほど低温保存で死亡している(1番上B)。これは複温後の生存率も同じ(上から2番目C)。しかしAFGPを混ぜることで120時間まで低温保存の生存率が改善(上から3番目A)している。複温後も72時間まではいいが120時間で急にダメになっている(上から4番目B)。
<Introduction>
細胞の輸送に低温保存が使用されるが、細胞へのダメージが生じてしまう。非凍結糖タンパクは低温環境で生存する生物が適応するために作り出したもので、氷結化抑制など多くの作用を有し、卵細胞などの低温保管に有効であるとの報告があるが詳細は不明である。特に成熟した3次元オルガノイド組織での効果は報告されていないため検討した。
<Methods>
マウスの腸管細胞からオルガノイドを作成した。AFGP(コントロール:ラクトアルブミン)を低温1時間前に入れ、以後各時間で視認&FDA(Fluoresceein diacetate)による生存率測定をし、その後37℃に戻し細胞増殖を確認した。FITC(緑)をつけたAFGPを顕微鏡で見てAFGPが細胞のどこに存在するかを確認した。
<Results>
細胞は単体C、若いオルガノイドY、成熟したオルガノイドMを準備した。AFGP無しならC>M>Yの順に低温or複温後の生存率が低下し72時間で全群0%となるが、AFGPを入れるとほぼ100%の生存率だった。ただ120hは低温生存100%だったが、複温後に全群死亡した。AFGPは細胞表面に付いていて、水で洗うと簡単に取れた。
<川堀の感想>
48時間で半分ほどしか持たなかった細胞が、72時間までほぼ100%保存(複温後も)出来る様になっており、細胞保存にAFGPが有効であると考えられた。南極の魚のタンパク質を使用したとのことだが、確かに利にかなっていると感心した。ただ、120時間では低温中は良いが複温後に全滅しており、ここを改善できるかがポイントだと考えた。