日本人の4mm以下の未破裂動脈瘤(UCASサブ解析)

Rupture risk of small unruptured cerebral aneurysms.
Ikawa F, Morita A, Tominari S, Nakayama T, Shiokawa Y, Date I, Nozaki K, Miyamoto S, Kayama T, Arai H; Japan Neurosurgical Society for UCAS Japan Investigators.
J Neurosurg. 2019 [Epub ahead of print]

Abstract
未破裂動脈瘤観察研究(UCAS)のサブ解析で小動脈瘤(3-4mm)の破裂する危険性について解析した。1132個の小動脈瘤(全体の37%)の破裂は23個(3年間:全ての破裂の20%)で破裂率は0.3%/年と低かった。破裂リスクはSAHの既往(HR11)、未治療HTHR5)AcomHR5)であった。

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左:発見されたAnのサイズ(青)、治療された数(緑線)、右:破裂した動脈瘤の数(オレンジ;桁に注意)と年間破裂率(赤)。

Introduction
UCAS研究で未破裂動脈瘤全体の破裂率は0.95%/年であるが、小動脈瘤(3-4mm)では0.4%と低い。しかしSAH40%程度が小動脈瘤の破裂である。この乖離を説明するためUCASサブ解析で小動脈瘤の動態について調べた。

Methods
UCASは日本脳神経外科学会が主導したコホート研究で、39ヶ月間283の施設から登録された未破裂脳動脈瘤を追跡した。小動脈瘤の大きさは3mm(2.5-3.4)4mm(3.5-4.4)とした。破裂した患者数やそのリスクについて調べた。

Results
5720人(6697個)中、2839(3132)が小動脈瘤持ち(全体の約50%)であった。手術治療は3mm495/1658個(30%)、4mm637/1474個(43%)で、他は経過観察。経過観察中に破裂したのは3mm (11/1163)4mm(12/837)で年間破裂率0.3%程度であった。破裂のリスクは若年、未治療高血圧、Acomであった。SAHで死亡したのは全体の2人(0.06%、他の死因は52)であった

<川堀の感想>
未破裂で4mm4.4mm以下)は発見される頻度が高いこと、治療は30-40%で他は経過観察されていること、経過観察されていて破裂したのは非常に少ない(0.3%300Anに一つ)、さらにSAHによる死亡は全体の死亡に関係していないほど少ないことがわかった。手術の合併症を考慮するとやる必要の無い手術で逆に合併症を作り、医療費を上げている可能性が考えられた。小さい未破裂動脈瘤を治療すべきかどうかは、破裂しやすさを評価できるようにならない限りは正当化されないような気もした。また治療は患者の不安を取り除く効果があると言う考え方もあるが、これは癌があっても根治せずにコントロールに置くということと同じ考え方ではないかと思い、適切にコントロールすれば大丈夫であると思う。