20180523 間葉系幹細胞の脳梗塞実験モデルのメタ解析(多くの論文の解析)

Meta-analysis of preclinical studies of mesenchymal stromal cells for ischemic stroke. Neurology. 2014; 82: 1277-1286

Abstract>脳梗塞に対する間葉系幹細胞の動物実験における効果を、過去に報告されている論文のメタ解析で検証した。46編の論文が見つかり44編で幹細胞の治療効果(運動機能改善、脳梗塞縮小)が確認された。投与ルート(直接投与>動脈>静脈)や投与時期で効果に違いが見られた。また研究クオリティーと効果には正の相関を認めた。

 Figureの説明>A)投与ルートと効果についての表。黒い菱形がそれぞれの平均。脳内投与(Intracisternal)が一番よく効いていて、次に動脈投与(Intra-arterial)、そして静脈投与(Intravenous)の順となった。B)梗塞サイズ縮小と投与時期の検討。8時間以内の投与が一番効果が高かった。

 Introduction>脳梗塞の治療において間葉系幹細胞MSC(国際細胞治療学会定義:プラスチックへの接着、CD105/90陽性、45/HLA-DA陰性)に期待が集まっている。基礎研究ではMSCの効果は神経細胞への直接分化ではなく、組織環境の整備(栄養因子分泌・免疫抑制・アポトーシス/グリオーシス抑制・血管新生)などが考えられている。今回過去の文献のシステマティックレビューを行い効果を検証する。

 MethodsPubmedMSCStrokeなどで検索された論文をレビューした。論文の質は査読有無、温度管理、ランダム化、無作為化、結果盲見化、脳保護効果のある麻酔の除外、合併症動物の使用、サンプル数推定計算、COI明記の10点満点で評価し、投与ルート・動物種・細胞取得種・投与時期・自家/他家/他種・細胞量の6項目を運動機能や梗塞サイズに影響があるかで検討した。

 Results46試験/62治療がヒットし、44試験/54治療で効果を認めた。平均クオリティースコアは5.5点で、数値は効果と相関した。運動機能改善効果と関係があったのは投与ルート(脳内投与>動脈投与>静脈投与)と細胞数(少ない方が効いた!)。梗塞サイズ縮小と関係があったのは細胞腫(自家>他種>他家)、早期投与などであった。

 <川堀の感想>複数の研究結果から静脈投与よりも直接投与の方が効果が高いという結果が出たことは少し驚きであった。なぜなら多くの研究は脳梗塞後すぐに静脈投与を行っており、この発症後短時間での効果が一番効果が見込めるからである。直接投与は少し時間が経ってから行われることが多いので、その時点での静脈と比較すると差はより大きく開くだろう。ただ動物モデルと人間では必ずしも結果が同じになるとは限らないことに注意すべきである。細胞が多くなると回復が悪くなるのは原因不明であるが静脈投与などで血管が詰まることが原因ではないかとこの論文では述べている。