20180519 神経幹細胞の移植部位による機能改善の違い

Implantation site and lesion topology determine efficacy of a human neural stem cell line in a rat model of chronic stroke. Stem Cells. 2012 Apr;30(4):785-96.

 Abstract>ヒト神経幹細胞45万個をラット脳梗塞モデルの①脳梗塞周囲、②脳室内に投与したところ①の改善が一番良かった。梗塞の範囲が被殻(白質)と被殻&脳表(灰白質)の群では被殻のみの方が改善が良かった。細胞投与による梗塞サイズの変化はなく、移植細胞は神経細胞(2%)よりもグリア細胞(20%)に多く分化していた。

 Figureの説明>運動機能障害の改善はほとんどで脳への直接投与群(濃い青)が他の群(脳室内投与(薄い青)、コントロール(赤))よりもよかった。

 Introduction>ヒト神経幹細胞(CTX0E03)は脳梗塞の動物実験で用量依存的に症状の改善が得られるが、この細胞は他の細胞より脳内での移動力は高くないため移植部位が重要になる。また脳梗塞のサイズも深部の白質のみと脳表の灰白質まで及ぶかでは回復が違うため、今回脳梗塞サイズと移植部位について検討した。

 Methods60分の一過性虚血モデル。ラットを4群に分け3日後に移植;無手術、梗塞&細胞無し、梗塞&脳内投与(25万個)、梗塞&脳室内投与(50万個)。またMRIで梗塞の程度を被殻(白質)と被殻&脳表(灰白質)に分けた。運動機能テストは3つ行い、細胞生着・分化・血管新生・神経新生(脳室壁)の免疫染色を行った

 Results>脳梗塞周囲移植群でのみ良好な運動機能回復を認め、それは特に被殻梗塞のみの群で良好だった。細胞移植による脳梗塞サイズの変化はなかった。移植細胞のグリア細胞への分化は20%、神経細胞へは2%であり、グリア細胞への分化と機能改善には相関を認めた。血管新生は被殻部分で梗塞周囲移植で改善していたが神経新生は変わりなかった。

 <川堀の感想>非常に多くの運動機能試験を行い、脳への直接投与が脳室内投与より良いことを証明していたが、臨床的には静脈投与も比較するべきであったと思われる。脳の表面の細胞が傷害された場合には奥の線維の障害よりも回復が悪いことは理解できる。移植した細胞が神経細胞ではなく、グリア細胞(神経細胞のサポートをメインとする)に分化する率が高く、かつこれが運動機能改善と相関していたことは脳内におけるグリア細胞の活性化が運動機能改善に重要であることを意味していると思われた。