脳梗塞に対する他家神経幹細胞移植(英国PISCES-2)
Intracerebral implantation of human neural stem cells and motor recovery after stroke: multicentre prospective single-arm study (PISCES-2).
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 [Epub ahead of print]
Muir KW, Bulters D, Willmot M, Sprigg N, Dixit A, Ward N, Tyrrell P, Majid A, Dunn L, Bath P, Howell J, Stroemer P, Pollock K, Sinden J.
<Abstract>
他家ヒト神経幹細胞CTX0E03の脳梗塞に対する英国での治験。脳梗塞後2-13ヶ月で上肢に麻痺のある患者に2000万個を同側基底核に移植し3ヶ月後の機能回復を見た。23人の患者で1人は3ヶ月、3人は6-12ヶ月で機能の回復が得られた。得られた患者は元々少し手が動いていた人。細胞に関する合併症は無かった。
<Figureの説明>
治験結果:()が%なので、それほど効いていない合併症:敗血症・脳梗塞・けいれんなどかなり重篤なものが多い(ただ最初から重症患者であった可能性はある)
<Introduction>
ヒト神経幹細胞CTX0E03はPhase1で11人の脳梗塞患者(平均30ヶ月、2000万個)に投与され、安全性に問題なく中等度の回復が得られた。今回比較的早期の脳梗塞患者(特に上肢の麻痺がある人)に対して細胞を投与し上肢の麻痺が改善するかどうかについて検討した(PISCES-2)
<Methods>
脳梗塞2-13ヶ月の40才以上で上肢の麻痺(NIHSS2-4, ARAT0-1)の患者に2000万個を同側基底核に投与する(5カ所/tract×8tracts)。主要項目はARAT試験で2点以上の改善、副次項目はARAT、NIHSS、BI、Fugl-Meyer、mRAの改善。細胞はヒト胎児より取得した細胞にc-mycを導入し凍結保存(-135℃)し解凍して使用。
<Results>
2014-2016で23人(41人中)参加。主要評価項目を満たしたのは1人(遅れて3人)。改善はARAT全般30%、NIHSS10点以上0%、BI9点以上40%、F-M10点以上30%、mRS1以上35%。NIHSS腕改善に年齢・元々の障害・発症からの時間は関係なかったが、ARATは元々障害の軽い患者のみが改善した。2名が死亡(1名原因不明の感染症、1名自殺)、他に脳梗塞(1名)硬膜下血腫(1名)けいれん(1名)、感染症(1名)であった。
<川堀の感想>
亜急性期から慢性期の上肢に強い麻痺のある患者に対して他家神経幹細胞を移植した治験であるが、上肢の麻痺に関してはほとんど回復は得られなかったという結論であった。また合併症もそこそこ多かった事も気になる。ただすでにこのデータを素に米国で慢性期患者に対してPhase3に進んでおり、その結果が注目される。奇しくも我々の治験とかなり近いプロトコールであるが、我々の方が良く効いている印象であり、我々のやり方も世界に通用すると考えられる。