自転車走行中のヘルメットの有無による脳脊髄損傷

Association of helmet use with traumatic brain and cervical spine injuries following bicycle crashes.
Page PS, Burkett DJ, Brooks NP.
Br J Neurosurg. 2020 [Epub ahead of print]

Abstract
自転車時のヘルメットの脳&脊髄損傷予防について2010-2016に入院した287人の患者をヘルメット有りと無しに分けて検討した。脳損傷(画像)は有り群で少ない(20%vs40%)。しかし脳損傷の重症度は変わりなく、逆に脊椎骨折はヘルメットで少なかった(3%vs9%)ヘルメットは脳損傷の頻度を減らすが、脊髄損傷は変わらない。

Figureの説明>
ヘルメット非着用でも脊髄損傷の頻度は変わらないが、脳損傷の頻度は増える
ただし脊髄損傷の入院期間は非着用の方が短い
また脳損傷の入院期間は着用・非着用で同じ
つまり画像上は脳損傷になるが重症度的には変わらない。脊髄損傷はむしろ軽いかも。

Introduction
自転車時のヘルメット着用による脳と脊髄保護のデータは一定しない。脳損傷は重症障害と死亡を1/3にする(2017メタ解析)との報告や頭蓋外出血は減らすが脳内出血は変わらないという報告もある。脊髄損傷に至っては小児で有用(60%減)や逆に着用が悪い(重さでより回旋する:2011メタ解析)というものまである。

Methods
2010-16にウィスコンシン大学に搬送された患者を後方視的に検討データは外傷データベースに入力されたものを使用。287人中149人がヘルメット着用、138人が非着用。予後や画像検査結果を比較した。着用群(平均35才、白人多)と非着用(平均20才、黒人多)では患者背景が違った。

Results
画像上確認できる脳損傷は着用で低かった(20%vs40%)が、重症度(Injury severity score)、退院時後遺症は同じであった。脊髄損傷の頻度は11%で同じだったが、着用群でICU入院期間が長かった(4vs1日)。また脊椎骨折は着用で高かった(8.7%vs2.7%)

<川堀の感想>
ヘルメットをしていないと画像上の脳損傷は増えるが、逆に脊椎の骨折はヘルメットすると増える(重さでより回旋する)という結果であった。しかし、背景(年齢や人種)・自転車使用目的(レジャーかスピードスポーツ)などの因子があるため確定的な事は言えない。どちらにしても高エネルギー(早い速度や高所からの転落)などの要因が大きく、ゆっくり走る分にはヘルメットは有っても無くても同じなのだろう。子どもは頸椎周りの靱帯が大人より柔らかいため脊髄損傷の可能性が下がるので頭部外傷をケアして着用するのが良いかもしれない。