脳梗塞に対する効果的な幹細胞とは(Systematic review)

Cell therapy for ischemic stroke: Are differences in preclinical and clinical study design responsible for the translational loss of efficacy?
Cui LL, Golubczyk D, Tolppanen AM, Boltze J, Jolkkonen J.
Ann Neurol. 2019 Jul;86(1):5-16.

Abstract
脳梗塞に対して細胞治療が有効だが、細胞種類、保存方法、投与ルートなどは最適化されていない。今回過去に報告されている論文を集めたSystematic reviewを行い
①動物実験で効果が得られている方法
②ヒト臨床研究で効果が得られている方法
③動物実験とヒト研究の違い
を検討した。

Figureの説明>
ヒト臨床研究における諸条件の違いによる回復具合
上の列AmRSの回復、下の列BBarthel Indexで、左から細胞種類(間葉系幹細胞MSC、単核球MNC、他Others)、自家他家(Autologous, Allogenic)、凍結の有無、投与方法(静脈、動脈、脳内)。これを見ると、他細胞(neuronal stem cell)で、自家で、非凍結で、脳内投与が一番良い結果が出ているとしている。

Introduction
脳梗塞に対する細胞治療は、細胞置換・免疫調整・血管新生・神経新生などの機序により有効性が示され、臨床試験も始まっているが基礎研究と臨床試験のギャップがあることが指摘されている。今回、動物とヒトでの試験においてどのような因子が回復に関与しているかをSystematic reviewで検討した。

Methods
2018/4までに報告された論文7677本から動物実験355本(梗塞体積/mNSS/ローターロッド/Adhesive removalテストを行っているもの)・ヒト研究10本(NIHSS/BI/mRS/FMSの記載があるもの)を選び、効果に関係する因子を検討した。

Results
研究の質:動物(10点中平均5)・ヒト(少なくとも一つ以上のバイアスあり)共に評価方法で完全でなく、qualityの高い動物研究になるほど回復は低かった
動物実験:細胞種類(自家>他家>他種>同系)、凍結(非凍結>凍結)、投与法(脳>経脳室>静脈>動脈)などの結果であった
ヒト研究:細胞(間葉系幹細胞>単核球)、細胞種類(自家>他家)、凍結(非凍結>凍結)、投与法(脳>静脈>動脈)結果であった。
動物実験とヒト研究の違い:細胞種類・凍結・健康状態・年齢・性別・投与時期が大きく違っていた

<川堀の感想>
非常に勉強になるsystematic reviewである。我々が現在行っているRAINBOW研究(自家細胞・非凍結・脳内投与)が最も効果が見込まれるという結果は嬉しく思う。ただヒト研究は対象となった論文数が少ないため決定的な情報とはなり得ないことは注意が必要である。