脊髄損傷における好中球NETSの影響
Neutrophil Extracellular Traps Exacerbate Secondary Injury via Promoting Neuroinflammation and Blood-Spinal Cord Barrier Disruption in Spinal Cord Injury
Zhou Feng et al.
Front Immunol. 2021 Aug 11:12:698249.
<Abstract>
脊髄損傷で損傷部位に最初に入ってくる炎症細胞の好中球の損傷関与について好中球細胞外トラップ(NETs)に着目し検討した。NETsは損傷部位にてTRPV4を発現→炎症・BBB損傷→浮腫とアポトーシスが生じた。またNETs抑制薬(PAD4・DNase1)で障害が軽減された。
<Figures>
全体の説明。脊髄損傷部位に集積したNETsが炎症とEdemaを増悪させることを示している。
<Introduction>
脊髄損傷において好中球は数時間~3日で損傷部位に集積し、活性酸素・MMP9等を放出し損傷を悪化させる。近年、好中球自体が破裂して周辺組織を絡めるNETsが報告され、感染症においては菌を捕獲するため有効であるが、脳梗塞等ではマイナスである。NETsが脊髄損傷でどう働くかについて調べた
<Method>
SDラットT9にクリップで脊髄損傷を作成。MPOとHistone H3でNETs、SYTOXオレンジで細胞外成分、Tunelでアポトーシス、H&Eで損傷体積を染色。損傷部位の炎症性サイトカインはリキッドChipで測定しMEPで脊髄の電気信号の回復を評価。
<Result>
脊損後24時間~3日で好中球組織浸潤とNETs形成がピークになった。PAD4とDNase1はNETs形成を抑制し、組織内の炎症サイトカイン(IL6/TNFa/浮腫)を軽減させ、アポトーシス/グリオーシスを抑制し、運動機能・MEP電位を回復させ、Tight junctionタンパク/BBBのリークを減少させた。またこの効果はTRPV4が関与していた。
<川堀の感想>
NETsは脊髄損傷後に損傷増悪に関与している報告。我々も同様の報告を行っている最中なので方向性は間違っていない事に少し安心した。ただ免疫染色がメインで、作用機序等があまり深く調べられていない。特にTRPV4は上流なのか下流なのかも不明でもう少し深い研究が望ましいと思う。