SAHにエクソソームは有効で特にその内容物でmiR140-5pが重要だった

Mesenchymal Stem Cell-Derived Extracellular Vesicles Alleviate M1 Microglial Activation in Brain Injury of Mice with Subarachnoid Hemorrhage via microRNA-140-5p Delivery.
Qian Y, Li Q, Chen L, Sun J, Cao K, Mei Z, Lu X.
Int J Neuropsychopharmacol. 2022 Jan PMID: 35015859

Abstract
ExosomeSAHに効果があると言われているが詳細が不明なので、内容物であるmiR-140-5pの効果を調べた。miR-140はマイクログリアのALF5と結合し、その下流のNOX2を抑制することでM1マイクログリアへの分化を抑制し脳内炎症を下げて、アポトーシスを抑制し結果SAHの予後を改善した。

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SAHモデルにEVを投与したところmiR140-5p入りが最も効果が良かった。各グラフでオレンジ(左から1番目)がSham、赤(左から2番目)がSAHのみ、黄緑(左から3番目)がSAHEV、緑(左から4番目)がSAHmiR140-5p入りEV、青(左から5番目)がSAHmiR140-5p阻害EVB:運動機能、C:アポトーシス、D:炎症タンパク(TNFα、IL1bIL6)、EM1/M2マイクログリア

Introduction
SAHにおいてマイクログリアが果たす役割は大きい。MSCが分泌するエクソソームはSAH・新生児虚血に効果が認められ、特に内容物のmiR-140-5pALK5とその下流のNOX2に影響しマイクログリアに関与していると思われる。今回SAHにてその関係を調べた

Methods
マウスでスレッドモデルSAHBMSC、エクソソームEV(超遠心)を準備した。in-vitroBV2(マイクログリア)細胞(miRの遺伝子導入、ALKの過剰発現・ノックダウン)に対して、エクソソーム取り込み(PKH67)、miRの変化(PCR)、ALKNOX2の変化(Western)を確認した。またmiRALKの結合をルシフェラーゼ活性で測定した。in-vivoではALKの過剰発現・ノックダウンを行い(脳室内投与)、SAH1時間後に200uLEVを投与し、24時間後の神経症状・神経細胞のアポトーシス、血液中の炎症タンパク、マイクログリアのフェノタイプを評価した。

Results
マイクログリアはエクソソームを介してmiR140-5pを取り込んでいて、miRALK発現を阻害していた。SAHモデルに通常EVmiR140-5p大量EVmiR140-5p阻害EVを投与したところmiR投与で最も障害が軽かった(運動・炎症タンパク・マイクログリアM1/M2↑)。しかしこれはマウスにALKを過剰発現させると効果が消えた。

<川堀の感想>
MSCから分泌されるエクソソームに含まれるmiR140-5pはマイクログリアに取り込まれてALKNOX2の発現を抑える事で炎症を抑える働きをしていたという研究であったが、かなり深い部分まで検討が行われており大変勉強になった。ただmiR140-5pを過剰発現させても3倍程度上がるだけであれば3倍量のEVを投与する事の方が良いかもしれない。EVの量が厳密に定義されていなかったところが残念。