パーキンソン病に対するES細胞移植後24年の剖検例

Extensive graft-derived dopaminergic innervation is maintained 24 years after transplantation in the degenerating parkinsonian brain.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Jun 7;113(23):6544-9

Abstract
パーキンソン病に対して24年前に胚性ドーパミン産生神経細胞を被殻に移植した患者の剖検記録。移植後劇的な機能改善を得ていた。剖検では移植細胞の脳内生着、炎症反応無し(免疫抑制終了後)移植細胞の11%にパーキンソン病特有の異常が確認(ホストの変性が移植細胞にも生じていた)された。 


Figureの説明>
移植部位近くには移植細胞(茶色)が確認できる。移植細胞が新たなネットワークを構築している(黒い矢印)。

Introduction
パーキンソン病(PD)において移植されたES細胞が20年近く生着(&正常に機能)していることが示されてきたが、病期の進行により移植細胞にも異常を生じるかどうかは分かっていなかった。今回PDに対してES細胞移植を行い症状の改善を見た患者の24年後の剖検例を報告する。

Methods
患者は24年前に薬剤抵抗性のパーキンソン病の患者の被殻に堕胎で得られた腹側中脳組織を移植し、死亡後剖検し、移植細胞染色(Tyrosine hydroxylase (TH)染色)、炎症細胞染色(Iba1, CD68)、パーキンソン病特有染色(a-synuclein)を行った。

Results
移植後3年で薬剤不要となり6年目に免疫抑制剤も中止した。その後7年目から薬剤再開されたが10年目までは臨床的に良好な状態であった。14年目くらいから症状が強くなり24年後に死亡した。剖検で移植サイドにはTH陽性の細胞が生着しており、正常なネットワークを構築していた。炎症は認めなかった。移植細胞の10%程度にパーキンソン病特有の染色を認めた。

<川堀の感想>
移植後24年経っても他家細胞であるESドーパミン産生細胞が脳内に生存していたこと、ネットワークを構築していたこと、実際に症状を劇的に回復させていたことに驚いた。堕胎の脳なので幼弱すぎて免疫応答が起きなかったのかどうかが気になるところ。そうであれば自家細胞であればもっと良い生着と改善が期待できるのではないかと思う。