20180805 アジア人におけるバイパス手術の効果

Risk of subsequent stroke, with or without extracranial-intracranial bypass surgery: a nationwide, retrospective, population-based study.
J Neurosurg. 2018 Jun 1:1-8. [Epub ahead of print]

Abstract
EC-ICバイパス手術の欧米人での有効性は否定されたが、アジア人に関しては不明。台湾の保険診療システムを使用し2001-10で脳梗塞の再発予防にバイパス術を行われた患者と対象群を後方視的に検討した。バイパス群では脳梗塞予防効果を認めた(HR0.6)が、出血も増えて(HR2.5)、効果が相殺されていた。

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カプランマイヤーカーブ。左上:全体の脳卒中再発率と右上:脳梗塞の再発はバイパス群で良好だが、左下:脳出血と右下死亡はバイパス群で不良。

Introduction
血行力学的虚血を有する患者の脳梗塞の危険は高く、バイパス術は有効と考えられてきた。しかし2つの大規模ランダム試験において脳梗塞再発効果は認めるものの周術期の合併症(出血性含む)によって全体の脳卒中抑制効果は否定された。しかしアジア人で効果は不明のため台湾で保険診療システムを用い検討した。

Methods
2001-10の後方視的コホート研究。脳梗塞で入院し動脈狭窄/閉塞の診断でEC-ICバイパスを行った患者(1440人、CAS/CEAとモヤ/癌は除く)と全く外科治療を行わなかった患者(10万人→年齢や合併症などマッチする5700人)で、1ヶ月~3年まで脳梗塞再発や死亡などを検討。

Results
全体の脳卒中再発率は2群で変わらなかったが、脳梗塞はバイパス群で有意に低下(HR0.6)で特に発症1年以内が顕著、脳出血はバイパス群で有意に増加(HR2.5)でこれは6ヶ月以内が顕著。全体での死亡率もバイパス群で有意に増加し(HR1.3)、3ヶ月~2年で最も顕著であった。

<川堀の感想>
バイパス手術による脳梗塞予防効果は認められるが、出血性合併症が増えることでその効果が消されてしまうという結果であった。死亡率もバイパスで悪いのは非常にショッキングであった。ただ個人的には血行力学的問題のある患者の脳梗塞の程度は軽く、むしろバイパス手術によって出血した場合の方が重大な事になる印象と合致する。ただバイパス手術の技術が必要な時があるのは事実で、どうやって技術を保っていくかは脳外科医に取って大きな課題である。