20170207 脳梗塞に対する骨髄幹細胞の臨床治験(Sanbio)
Clinical Outcomes of Transplanted Modified Bone Marrow-Derived Mesenchymal Stem Cells in Stroke: A Phase 1/2a Study.
Stroke. 2016 ;47(7):1817-24
<Abstract>
遺伝子改変骨髄幹細胞(SB623)を脳梗塞慢性期の患者に直接投与し安全性と有効性を検討した。18人に投与が行われたが後遺症の出現はなかった。mRSは変わりなかったが、ESS/NIHSS/F-Mにおいて有意な改善が得られた。投与1週間後に同側のT2の高信号が運動機能改善と相関していた。
<Figureの説明>
運動機能改善:慢性期の患者にもかかわらず、投与1ヶ月後よりEuropean Stroke Scale(A), NIHSS(B), Fugl-Meyer (C), F-Mの運動機能(D)で有意な改善が得られている。
<Introduction>
近年様々な細胞腫・投与方法を用いた脳梗塞に対する細胞治療の有効性が一部で示されつつある。メタ解析で骨髄幹細胞においては頭蓋内直接投与法が一番効果が高いと報告された。Notch1遺伝子導入した骨髄幹細胞を脳梗塞モデルに投与したところ良好な改善が得られたため慢性期の脳梗塞患者において治験を行った。
<Methods>
脳梗塞後6-60ヶ月で前2回のNIHSSが変わらない麻痺が固定した慢性期の患者18人(379人中)を対象とした。細胞は250万、500万、1000万の3群で、頭蓋骨に一つの孔を開け、そこから脳梗塞周囲に3つの投与ルートを設定し各ルートで5部位に投与。以後12ヶ月間の運動機能改善をチェックした
<Results>
細胞に起因する有害事象は22%(筋拘縮・歩行障害)であったが、後遺症を残すものはなかった。麻痺機能(ESS/NIHSS/F-M)は投与一ヶ月後より改善し6ヶ月以降で有意差を示したが、細胞数・脳梗塞重症度との関係はなかった。MRIで投与1週間後に一時的なFLAIR高信号を認めこれが運動機能改善と相関した。
<川堀の感想>
慢性期の患者において運動機能改善が得られたことに驚いた。本細胞が日本での適応になれば多くの患者への福音となると考えられた。ただしNIHSSの改善は2点程度と“劇的”な回復とは言いがたく、より良い細胞の開発や効果的な投与方法などの検討が必要になると考えられた。