妊娠中の血栓回収療法

Endovascular management of acute large vessel occlusion stroke in pregnancy is safe and feasible.
Limaye K, Van de Walle Jones A, Shaban A, Desai S, Al Kasab S, Almallouhi E, Holmstedt CA, Ortega-Gutierrez S, Haussen DC, Nogueira R, Mont’Alverne F, Ragiotto C, Rebello LC, Jovin TG, Hasan D, Jadhav A.
J Neurointerv Surg. 2019 Dec 4

Abstract
妊娠中の血栓回収は治験の除外項目となり有効性が不明なため、今回検証した。2000-19で血栓回収を行った妊婦7名(平均33/NIHSS153人はtPAも施行、治療:ステントリトリーバー/ADAPT/coronary stent留置)で、術後脳出血等の合併症はなく、退院時NIHSS1.7点と良好な成績だった

Figureの説明>

患者7名の生データ。下の方でDelivery outcomeとあるが、確認できた症例では5例中4例で通常に分娩できている。

Introduction
血栓回収療法の治験除外項目(時間オーバーなど)に対する新たな研究が進んでいる。妊娠中の脳卒中は10万人あたり3.8-11人と言われているが、妊婦はtPA&血栓回収の治験の除外項目となっており、効果が不明なため、今回検討した 

Methods
2000-19に米国&ブラジルの7施設にて血栓回収を行った主幹動脈閉塞の妊婦患者を後方視的にreviewした。年齢・NIHSS・時間・CTデータ・再開通率(TICI)・合併症を検討した。胎児への放射線被曝軽減のためカバーを使用した。

Results
7名の妊婦(25-38歳、NIHSS15、妊娠初期2/中期2/後期3)が発症3時間(1-10時間)で治療を受けた。うち3人はtPAも併用。全例右大腿動脈アプローチ可能で、ステント・ADAPTで治療(TICI2b以上6名、造影剤156ml54-300ml)、放射線2Gy1.2-3.9Gy))。術後脳出血が1名(tPA併用)であったが拡大無く、退院時NIHSS1.7と良好だった

<川堀の感想>
過去の報告では26000件の妊娠に1件の脳卒中が生じるとあることから、日本では年間50-100件程度の妊娠中の脳卒中が発生していると考えられ、その中で主幹動脈閉塞は更に少ないだろう。ただ万が一の際に血栓回収が可能であるという知識(更にtPAは胎盤を通過しないが、造影剤はすることも)は持っておく必要がある。患者が若いということもあるが回復は非常に良い。1例だけ回復しなかった症例は10時間以上経っているのでやはり時間が重要だろう。母児共に救えるように備えておきたい