くも膜下出血をたくさん治療している施設は成績が良いのか?

Effects of case volume and comprehensive stroke center capabilities on patient outcomes of clipping and coiling for subarachnoid hemorrhage.
Kurogi R, Kada A, Ogasawara K, Kitazono T, Sakai N, Hashimoto Y, Shiokawa Y, Miyachi S, Matsumaru Y, Iwama T, Tominaga T, Onozuka D, Nishimura A, Arimura K, Kurogi A, Ren N, Hagihara A, Nakaoku Y, Arai H, Miyamoto S, Nishimura K, Iihara K.
J Neurosurg. 2020 Mar 13:1-11. doi: 10.3171/2019.12.JNS192584

Abstract
日本でのSAH患者の治療成績が①治療数、②施設レベル(各4段階)で変わるか(クリップとコイル別)を検証した。J-ASPECTに登録した2010-1527490人を後方視的検討した。全体では①②が上がると治療成績も良くなり、特に退院時の予後との相関があったのはコイル(notクリップ)だった

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クリップ治療数と成績
左から全体成績、Q1(治療件数中央値3件)、Q6件)、Q9件)、Q11件))で、患者重症度(JCS)は治療数(Q1-4)とあまり関係は無かったが、病院内死亡はQ1:10%→Q4:8%20%減で、退院時重症度は変わりなかった(Q1:42%Q4:44%
コイル治療数と成績
左から全体成績、Q1(治療件数中央値1件)、Q3件)、Q6件)、Q12件))で、患者重症度(JCS)はクリップと同様に治療数(Q1-4)とあまり関係は無かったが、病院内死亡はQ1:18%→Q4:13%20%減で、退院時重症度もQ1:55%Q4:46%と減少した

Introduction
くも膜下出血の治療成績は、①たくさん治療している施設(緊急時の対応に慣れているなど)②総合的治療センター(看護師の数やリハビリが充実)の方がそれ以外より良いと言われる。2010年に始まった日本のくも膜下出血研究(J-ASPECT)のデータを用いて日本でも①②と成績に関係があるかを調べた

Methods
J-ASPECTは脳外科、脳卒中、神経学会の指導施設1369中の447施設が参加し、保険診療データDPCを用い、2010-15SAH患者のデータ(重症度をJCSで評価)を集積。①治療数と②施設レベル(CSCスコア25点)との相関を見た。①②とも少ない方から多い方に4つ(Q1, 2, 3, 4)で分類した

Results
クリップが18715件、コイルが9775件で、①と②の相関(Kental tau-b)は弱かった。
クリップは①②院内死亡:Q4Q1(約20%減)と成績が良くなったが、①②退院時予後は変わりなかった。
コイルは①②院内死亡はコイル①院内死亡と予後は①(Q430%減)で良くなったが②では変わりなかった。

<川堀の感想>
重要なのは3ヶ月後の予後だと思うが、年1件程度の施設と年20件以上の施設でも思ったほど変わっていないという少し驚きの結果であった(たくさんやっている方が圧倒的に良いのかと思っていた)。ただ①②の高い施設は難しい動脈瘤(JCSだけでは判断できない動脈瘤の場所など)が紹介されてくるなど背景がかなり変わるので、データをそのまま鵜呑みには出来ない。しかし「たくさんやっている施設で治療を受けることと、そうでないところで治療を受けることは、信じられないくらい差が付くんだよ」という事では無いと言うことだけは言えるだろう。医療の均てん化(どこにいても適切な治療が受けられる)という意味では素晴らしいことではある。