血小板を使った細胞培養での機序解明

Platelet-rich plasma enhances the proliferation of human adipose stem cells through multiple signaling pathways.
Lai F, Kakudo N, Morimoto N, Taketani S, Hara T, Ogawa T, Kusumoto K.
Stem Cell Res Ther. 2018 Apr 16;9(1):107. 

Abstract
血小板濃厚血漿(PRP)の細胞促進機序を調べた。ヒト脂肪幹細胞(hASC)PRPPDGF(栄養因子)添加し培養。inhibitorで効果抑制を調べた。1%PRPもしくは10ng/mlPDGFで培養は促進されたが、PDGF抑制で効果は失われ、それにはERK1/2AktJNKのパスウェーが関係していた。

Figureの説明>

a左)細胞培養はPRPの濃度依存で増殖が亢進、a右)PDGF-BBも同様
b, cPDGFレセプターブロッカー(imatinib)、多レセプターブロッカー(Srafenib)を入れると培養亢進が抑えられた。(b:PRP, C:PDGF

PRP
を混ぜると細胞分裂の周期がG0/G1(分裂後のお休み時期)が↓、S期(DNA合成期)↑、G2/M期(分裂期)↑。細胞の休みが減って分裂に関する時期が増えている

Introduction
細胞を培養する際に動物由来のFBSでは無く、血小板濃厚血漿(Platelet-rich plasma:PRP)の有用性が指摘され居てる。活性化血小板は内部のα顆粒中の栄養因子(PDGFEGFIGFTGF-bVEGF)などを放出し細胞培養を促進する。今回PRPがどのようなカスケードで培養促進しているか調べた。

Methods
PRPは血液を2回遠心して血小板を回収し、トロンビンを添加して活性化し、その後遠心して上清を採取して作成。栄養因子(PDGF)・ヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hASC)の培養速度(48時間後)、セルサイクル、下流タンパク発現を評価。PDGF等のinhibitorを入れて何が培養速度を上げている因子かを検討

Results
PRPは通常の血清に比べ25PDGFが含まれた。PRP00.21.0%の濃度で培養速度が上がった(逆に3-5%で下がった)。またPDGF-BB自体も濃度依存性(0→2→10ng/ml)に培養速度を上げた。PRP/PDGFは細胞のDNA合成期を増やし細胞分裂を促進していた。これらはPDGFレセプターブロッカー等で抑制された。下流シグナルはERK1/2AktJNKが関与し、p38は関係無かった。

<川堀の感想>
PRPの細胞培養増殖効果はPDGFが細胞表面のレセプターに結合し、ERK1/2などのシグナルを通じて細胞分裂期を増やす(休息期を減らす)ことで成し遂げられていた。不思議なのはPRPが濃すぎた時に逆に悪くなったこと(天井効果あり)だが、これがPDGFでは確認されていないことは残念。早く増殖するようになったことは確認できたが、出来上がった細胞は変わりないのかも調べることが必要だろう(質の悪い細胞を大量に生産出来る様になっても意味が無い)。