幹細胞シートの自然剥離を防ぐのに塩酸ファスジルが有効
ROCK inhibitor Y-27632 maintains the proliferation of confluent human mesenchymal stem cells
J Periodontal Res. 2014 Jun;49(3):363-70.
<Abstract>
幹細胞シートを作成しようとすると細胞内Rhoキナーゼ(ROCK)の影響で細胞が収縮してはがれてしまい、結果増殖が止まる事がある。ROCKキナーゼ阻害薬(塩酸ファスジルY-27632)を入れると剥がれが抑制された。またシートは細胞増殖も良好で幹細胞の性質を保つことが出来た。
<Figureの説明>
細胞の収縮を抑えるファスジルを添加したことで細胞の収縮を防ぐことが出来てシート化が得られている。
<Introduction>
間葉系幹細胞(MSC)のシートは実臨床で有用な可能性がある。通常、細胞はコンフルになると増殖を止めるが、TGFb-1・アスコルビン酸・血漿の存在下では更に増殖し積層化する。ただこの場合細胞同士が引っ張り合いフラスコからはがれてしまう(TGFがRhoキナーゼを刺激)。ROCK阻害薬を入れたシート作成を検討した。
<Methods>
ヒトMSC(Lonza)のP2をMEMa、10%FBSでヒトフィブロネクチンコートプレートに播種し、10uMのROCK阻害薬(±)。①剥離の有無と面積、②細胞品質:量(DNA測定QIAamp DNA Mini kit)、生存率(Neutral red)、分裂率(BrdUアッセイ)、③マーカー、④分化能を評価
<Results>
ROCK阻害薬(-)のシートは剥離したが(+)では剥離が抑制された。細胞DNA量は2日目は同じで4日目は(+)で多かった。(-)は端っこ(剥がれ近く)で細胞増殖が停止し、同部位ではパキシリン(細胞癒着タンパク)が発現していたが、(+)で発現無し。ROCK阻害薬の有無で細胞の性質(表面抗原・分化能)に変わりはなかった
<川堀の感想>
塩酸ファスジルは脳外科領域では非常に高頻度に使用する薬剤であり、なじみ深いですが、幹細胞にも応用可能とは思いつけませんでした。幹細胞シートは認知症などに使用可能であり、大きな可能性を有しています。非常に良い情報をいただけました。