口腔内細菌は脳出血のリスク

Intracerebral hemorrhage and deep microbleeds associated with cnm-positive Streptococcus mutans; a hospital cohort study.
Tonomura S, Ihara M, Kawano T, Tanaka T, Okuno Y, Saito S, Friedland RP, Kuriyama N, Nomura R, Watanabe Y, Nakano K, Toyoda K, Nagatsuka K.
Sci Rep. 2016;6:20074.

Abstract
口腔内のcnmタンパク(コラーゲン接着能)を発現したミュータンス連鎖球菌保持と脳卒中の関係を100人の患者で評価した。菌保有者は脳出血患者で多く(OR4.5)MRIで深部微小出血が多く見られた(OR3)など小さな血管の破綻と関係すると思われた。

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脳出血の26%cnm陽性の連鎖球菌が口腔内から確認されたが、他の病型ではラクナ(12%)、心原性(6%)、アテローム(0%)と違いが見られた。
CMBの数はcnmが陽性の患者で平均8個、他の患者で平均2個と大きな違いが見られた。

Introduction
脳微小出血(CMB)長期間の高血圧・加齢・腎臓病などで数が増え、将来の脳出血やラクナ梗塞などに関係する。先行研究で口腔内のcnm遺伝子発現連鎖球菌を持つ人はCMBが多く(OR14)、これはcnm遺伝子がコラーゲンに接着し破壊することが原因だと分かった。今回実際に脳卒中を生じた人にcnm遺伝子陽性連鎖球菌が多いかを検証した。

Methods
国立循環器病研究センターに入院した脳卒中患者100人(疾患定義の参考文献有り)を対象として、MRIT2*等)と入院後3日以内に口腔内からサンプルを取得し培養した。連鎖球菌のCnm遺伝子発現(PCR)やコラーゲン接着能を調べ、微小出血との関連を調べた。

Results
99人(70.1際、男性63%)が参加し、脳梗塞67人、脳出血27人、TIA5人であった。全体の52%が連鎖球菌陽性で、11%がさらにcnm陽性であった。cnm陽性群は炎症反応が高値で、脳梗塞より脳出血が多く(OR4.5)、脳深部CMB(平均8vs2個)も多かった。

<川堀の感想>
コラーゲンに接着しタンパクを破壊する作用のある口腔内細菌cnm陽性ミュータンス連鎖球菌を口の中に持っていると、脳出血やラクナ梗塞といった微小血管の障害が増えることはわかりやすかった。少なくとも十分な口腔内治療を行えば一定数の脳出血は減らすことが出来るかもしれない。ただ一般人の保菌率が分からないこと、陽性が11名と頻度は高くなかったことなどから、費用対効果が懸念される。