脳梗塞モデルに初めて骨髄幹細胞を投与した論文(Chopp)

Intrastriatal transplantation of bone marrow nonhematopoietic cells improves functional recovery after stroke in adult mice.
Li Y, Chopp M, Chen J, Wang L, Gautam SC, Xu YX, Zhang Z.
J Cereb Blood Flow Metab. 2000 ;20(9):1311-9.

Abstract
脳梗塞モデル(MCAO)マウスにBMSCBrdUラベル)を線条体投与し機能回復を見た(他は脳梗塞のみ、脳梗塞に生食投与、正常脳にBMSC投与)。運動機能はBMSC投与群で有意に改善し、投与28日後にBMSC移植部位から2.2mm移動し、1%Neuron8%Gliaに分化していた。

Figureの説明>

脳内に投与した細胞が神経マーカーを発現している(BrdUは元々つけておいたタンパク、NeuNは神経系のタンパクにくっつく)

Introduction
胎児由来の神経幹細胞移植は倫理(堕胎から得られる)と免疫排除問題がクリア出来ない。骨髄には血液幹細胞(HSC)と間質細胞(MSC)があるが、MSCは培養が簡単・免疫排除率が低い・神経細胞にも分化可能などの利点があり、神経幹細胞の代わりになるかもしれないため、脳梗塞モデルで調べた。

Methods
マウスの骨髄から骨髄液を取り、赤血球を溶解、DMEM&10%FBSで培養、3日後に接着細胞のみ継代し、使用前にBrdUでラベルした。脳梗塞は血栓でMCAを閉鎖、4日後に10万個のBMSCを線条体に投与(比較は脳梗塞のみ、脳梗塞&生食投与、正常脳&BMSC投与)。28日間RotarodmNSSで評価し、NeuN/GFAPで細胞の分化を評価した。

Results
培養した幹細胞の形はSplindleFlat2つがあった。脳梗塞サイズはどの群も変わらなかった。移植細胞生存率・移動は脳梗塞(6%2.2mm移動)が非脳梗塞(0.5%、針周囲のみ存在)より良かった。運動機能は細胞投与で28日後に非細胞投与より良くなった。BrdU陽性細胞の中で、NeuN陽性は1%GFAP陽性は8%だった。

<川堀の感想>
脳内に幹細胞を入れることで脳梗塞が改善することを初めて報告した論文。やっていることは非常にシンプルだが、我々を含む多くの研究の源流となった論文で有り、その功績は大きいと思う。昨今の研究手法は非常に高度でこの20年間の進化を感じるが、本当に価値のある仕事は「アイデア」なのかもしれないと思う。