脳出血後にマイクログリアの血腫吸収を促進させるのはマクロファージ由来のエクソソームだった

Extracellular Vesicles From Bone Marrow-Derived Macrophages Enriched in ARG1 Enhance Microglial Phagocytosis and Haematoma Clearance Following Intracerebral Haemorrhage
Hu et al. J Extracell Vesicle. 2025

 <Abstract>
脳出血後の血腫の吸収にはマイクログリアが関与していると考えられているが詳細は不明である。今回血液由来マクロファージから分泌されるエクソソーム(とそれに含まれるARG1タンパク)がマイクログリアの骨格変形(RAC1依存)を促すことで血液吸収を促進している事がわかった。

 <Figures>

実験の模式図。マクロファージ(Mφ、BMDM)から出たエクソがARGを含有し、それがMcf2を活性化させてRAC1-DBLを更新して血腫の吸収を促している事がわかる


Mφを除去したマウスにMφ由来のエクソを投与しても血腫吸収が促進された

<Introduction>
脳出血において血腫の吸収促進は重要で、マイクログリアMGとマクロファージが関与(ダメージ認識レセプターCD36NRF2の発現)しているが、お互いの連絡関係は不明である。エクソソームは細胞間の伝達物質で、MGが積極的に受け取るとされている。今回、脳出血後にMGの間でどのような連絡が行われ血腫吸収が進んでいるかを調べた

 <Method>
出血モデルはマウス自家血注入。MG細胞はマウス胎児脳、はマウス骨髄から採取。脳内&のエクソ(超遠心法回収)にプロテオミクスを実施。脳の変化をSingle cell RNA seqFACSで評価。In-vitroMGの貪食能とARG1(遺伝子導入)の関係を検索

 <Result>
脳出血後の脳には多くのMφが浸潤していて、MφにはARG1NOX2の発現が上昇し、Mφをノックアウトすると出血吸収が阻害されていたことからMφが血腫吸収に関係していた。またMφ由来のエクソをMφノックアウト脳出血モデルに投与しても出血吸収が促進されていたことからMφ自身ではなく、分泌するエクソがMGを活性化したと考えられた。ARG1に着目してMφのARG1をノックダウンしたエクソを投与すると血腫吸収が阻害された。受け取ったMGでは細胞骨格変形(Mcf2-Dbl-Rac1)の遺伝子変化が起きていた

 <川堀の感想>
脳出血には血中のマクロファージが出すARG1が入ったエクソが脳内のマイクログリアの血腫吸収を促進させるという研究で、人為的にARG1含有エクソを投与することで出血後の吸収を促進できる可能性がある。ただし血腫周囲のMGの量に比して血腫量は多いので、どの程度この効果が予後に貢献できるかは不明だと感じた。