モヤモヤ病バイパス手術の血管閉塞
Angiographic and clinical outcomes of non-patent anastomosis after bypass surgery in adult moyamoya disease.
Seung Hwan Kim, et al
Acta neurochiruugica 2019 161:379-384
<Abstract>
成人の症候性モヤモヤ病でバイパス手術直後にバイパス血管が閉塞した患者の臨床・画像経過は不明である。31例で閉塞と症状改善に関係あるか検討した。手術翌日の検査で20側は開存、11側は閉塞。しかしその後の検査で全例再開通し、全例で症状は改善した(脳梗塞再発2例は開存群)。直後の開存は症状改善には関係ない事が分かった。
<Figureの説明>
A)B)手術後にバイパス血管が写っていないが、C)で詰まった血管が再開通している。
<Introduction>
モヤモヤ病は内頸動脈終末部の閉塞による脳梗塞や脆弱血管による脳出血を起こす病気である。治療には浅側頭動脈の脳血管へのバイパス手術が行われるがバイパス手術直後に閉塞を来すことがある。このような患者のその後の臨床症状および画像経過がどのようになるかは不明であることから調査を行った。
<Methods>
2011-2016に手術した31例(症候性・18歳以上・男10女19、平均46歳、TIA18梗塞8出血5)。バイパスはeloquent部位を避けて側腹吻合&間接バイパスとした。翌日に3DCTAで開存を確認し、閉塞予防にバイアスピリン開始し、閉塞していた時はシロスタゾールも追加した。1-2週後、6-15ヶ月後に血管造影、mRSで評価した。
<Results>
手術中に閉塞したのは1例のみ(ヘパリン3000Uでもダメ)。1例で無症候性硬膜外血腫(保存加療)。翌日CTAで20例が開存し11例が閉塞していたが、その後全例で再開通した(1週間が1例で、6ヶ月以上が10例)。開存群でその後の閉塞は無かった。47ヶ月フォローし、開存群・閉塞群で術後の症状は改善し、脳梗塞再発はむしろ開存群に2例見られるなど直後の開存と症状には関係が無かった。
<川堀の感想>
通常の動脈硬化の患者では一旦バイパスが詰まった場合は再開通しないことが普通なのだが、モヤモヤ病では再開通することが報告された。自験例でも再開通しており、非常に不思議である。まだまだ分からない機序がモヤミャ病にはあると思われる。また小児の報告は無いため我々でもデータを再度確認したい。